- スキャンダルはやっぱり、嫌われる
ジョンソンによるコロナ下でのルール破りは多くの国民の怒りを買ったが、同時に、一挙に人気を失くしたのが、スコットランド国民党(SNP)だ。
女性党首ニコラ・スタージェンがいた時には二ケタ台の議席を誇っていたが、彼女は2023年3月に辞職。その直前から、同党による不適切な資金流用疑惑に警察の捜査が入っており、同23年4月、スタージョンの自宅とSNP党本部が家宅捜査の対象となってしまう。同年6月にはスタージョンが逮捕される顛末を迎えた。引き続き捜査は継続中だ。
スタージェンの後を継いだハムザ・ユーサフがスコットランド自治政府の首相に就任したが、政権運営に疑問符がつき、今年4月末、首相職を辞任している。新たなSNP党首・自治政府首相が決まったものの、SNPにかつての勢いはない。
- なんだか面白みがない、スターマー首相
新首相は労働党首スターマーである。この人は本当になんだか面白みがない。現在61歳。弁護士としてキャリアをスタートさせ、検察局長にまで上り詰めた。2015年の総選挙で議員として当選。議員になって、また9年しかたっていない。
選挙中のテレビ番組の中で、「政治ロボット」と視聴者に呼ばれてしまったのだが、つまり、「きれいなことを言うが、自分の言葉で語れない」ということだろう。
首相就任後、真っ先にやったことの1つが、保守党政権下で成立したルワンダ移送計画の廃止だ。人道主義を表に出した格好で、筆者は個人的にはうれしい。しかし、通常は保守党支持なのに、今回は労働党に投票した人をつなぎとめるため、大きな政治方針の転換はしないのではないか。
- 台風の目玉の新人議員、ファラージ
今回の選挙で、最大の注目どころは、ナイジェル・ファラージの当選ではないだろうか。
ファラージについては「英国ニュースダイジェスト」のコラムでも書いているが、今回が8回目の挑戦でようやく当選した。
元々は保守党員だったが、英国のEUからの離脱機運を作った人々の一人。英国独立党(UKIP)の党首でもあった。
現在は政治思想的にはUKIPと同類の政党リフォームUKの党首だ。
ファラージには反移民的な言動もあり、リベラル層からは嫌われている。
しかし、かつてEUからの離脱が政治的にはタブーであった時代から離脱を言い続けた政治家であり、この反移民的言動もまた政治家としてはタブーだが、ファラージに共感を持つ国民は少なくない。
国民から一定の支持があるのなら、やはり、国民の代弁者として下院議員となり、議論を通じて立法・立案に参加することには意味がある、と筆者は常々思ってきた。リフォームUKやファラージの政策に賛同するかどうかは別問題であるが。
リフォームUKはゆくゆくは政権党・労働党に対抗していく、とファラージは述べている。「え?そんなことはないでしょう」と多くの人がいう。でも、どうなるかはわからないのである。
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もっと深く知りたい方は、投票日に出た「英国ニュースダイジェスト」の選挙特集もご参考に。
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一時帰国中に、TBSラジオの荻上チキさんによる「セッション」(7月3日放送)に出演させてもらい、総選挙直前の英国の政治状況やBBCのこれまでを振り返る新刊について話しました。当方による聞き苦しい言葉のトチリなどがありますが、ご関心のあるかたは以下からどうぞ。チキさんはシャープで、かつ温かい方でした。
小林恭子さんが語る〜『BBC、その光と影』
編集部より:この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2024年7月6日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。
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