日本で「年金では暮らせない」と嘆く方々が多く、更に街頭インタビューで30〜40代ぐらいの方に「年金どう思いますか?」と単刀直入に聞いたら「僕らの世代ではもらえなくなると思います」というご意見が相変わらず多いのにはびっくりしました。

もらえなくなるような年金の制度設計はないはずですが、基金の部分が減る公算はあります。その場合、支給が例えば今の65歳から70歳とか75歳になるとか、金額がやや減る公算はありますが、積立損ということにはならないとみています。

事実、昨年の報道では年金運用をするGPIFが23年度にあげた運用収益は45兆円、過去5年で見ても106兆円儲けており、これは設定されている運用目標の6倍です。これにより現在の仕組みで年金を支給できる計算上の各個人向けの支給額は約5%ポイントぐらい高くなっているのです。もちろん、良好な運用がずっと続くわけではないですが、我々の知らぬところで巨額の稼ぎをしていて年金制度の根幹を支えているとも言えます。

ちなみに私が新入社員の頃は厚生年金とか厚生年金基金ってなんだ、と思ったものです。会社が半分払ってくれるありがたみなぞ全く感じたこともなかったのですが、国民年金になり、企業年金のように「マッチング」がないので「ありゃ、これは積み立てが増えないぞよ」とようやく感じたぐらいです。

そもそも「年金暮らし」なんていうのはドラマの世界か、2階建て3階建ての企業年金制度をフルで享受できるサラリーマンをきっちり勤め上げた方の話です。また、年金にすがるという時代から賢いお金の貯め方、増やし方の書籍や講習が巷にあふれるようになり、マネーリタラシーが少しずつ高まっているので様々なところに投資をして若い時分には多少損をしてでも体で覚えていくことが大事でしょう。

カナダでもそうですが、国の制度年金だけで将来ずっと食っていけるなんて思っている人は誰もいないのです。カナダで老後、いくらいりますか?という話が数か月前あったのですが、1.7ミリオンドル(約2億円)というとんでも金額が出ています。日本の2000万円の10倍です。そのために多くのカナダ人は資産形成の一環で住宅を無理してでも購入するケースが多いわけです。

カナダである程度の年齢になり、施設などに入る場合、愛着ある自宅を売却して億円単位のお金を手にして「これであと20年は大丈夫」なんていう話をよくしているわけです。逆に家無しの人は他の代替資産がないと本当に厳しくなるとも言えます。

日本で報じられているように30〜40代で貯金が2-300万円しかないというのは厳しいです。お金に働いてもらって複利運用するといった工夫が欲しいところですね。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年7月7日の記事より転載させていただきました。