問題の多い都市再開発

都市再開発の問題は大きく3つです。

第一に、過度の機能集中がますます進むことです。GDPに占める割合は20.7%、通信放送業企業はほぼ東京にあり、大企業は東京に集中。結果、法人税は東京に集中する構造です。大手企業本社だけでなく、政治行政はもちろん、メディアも、つまり政治・行政・経済・情報、すべてが集中しているのです。大学や学術研究所も東京に集中しているので、東京中心の日本社会が出来上がっています。

第二に、公共性がないがしろになること。高層ビルに囲まれた街は魅力もそれなりにあるのですが、景観や生活者や勤務者にとっての「ウェルビーイング」の面で多くの課題があります。

三井不動産へ批判が集まっているのですが、少しかわいそうな面もあります。ディベロッパーにとってみれば、ビジネスはビジネス。社員が色々頑張って地権者を説得しまわって土地を集め、集積・集約する、そのために長年にわたり根気よく調整・コミュニケーションなど活動してきたのだからです。

しかし、公園まちづくり制度を使って都市計画の法律の趣旨からみると疑問の規制緩和は、「空を金にする」という批判受けても仕方がありません。規制する側の自治体にしてみると、規制を緩和して、人を集め、税金を集めたいのは仕方のないことがあります。しかし、歴史文化や景観、どこかにいってしまっています。災害リスクに対して、誰も異を唱えないし、開発を誰も止められません。グローバル競争という名のもと、ますます東京に富が集中していきます。

第三に、東京一極集中を本気で止めないとやばいからです。国は国家戦略特区で麻布台ヒルズなど都心の再開発を促進しています。「都市再開発法」「都市再生法」「都市計画法」などの法律、そして、「公園まちづくり制度」という規制緩和の活用で歯止めが利かなくなってしまうと、結果として、どんどん地方は衰退します。

石丸さんは「多極分散」といいますが、東京でないところで運動を進めていくべきだったかと思います。日本国民全体から見ても「東京だけが栄えること」に対して納得がいかない人も多いでしょう。東京圏以外では郡山、宇都宮、高崎、相模原、大宮、姫路、岡山、博多といった地域はそれなりに元気ですが、そのほかの地方都市は厳しい状況に置かれています。消滅可能性都市を救うには一極集中を止めるのは一丁目一番地です。

再開発について都民・国民の声を聴こう!

高層マンションが立ち並び、マンション価格は高騰、物価は高騰。とはいえ、東京都の今住んでいる地域に今後も住みたいと思うかという設問に、「住みたい」は72%、「住みたくない」は10%(東京都調査)となっています。我慢しても住まざるを得ない、という人が多いことがわかります。その声に真摯に答える都知事の選出を望みます。

確かに、東京に問題を問うとなると、正直のところ厳しいのかもしれないです。本来なら都市再生、都心の開発は国政マターでもよいものだろうと思います。

多くの人が、国土全体はどうすべきか? 都心に集中させるべきか? に対して意見があるはず。実際のところ、人口、経済社会等の日本の将来像に関する世論調査で「地方から東京への集中は望ましくない」と答えた者の割合が全体で48.3%もいるのです。国民の約半数。都民にも過剰な集中の弊害を気にする人はいます。こうした声に誠実に答えることが新都知事の役割になるのでしょう。

・東京経済は本当に順調なのか?:EBPMで見る都知事選政策検証① ・都民の実感はどうなのか?:EBPMで見る都知事選政策検証②