コモンを維持するコストは誰が負担するのか

そもそも蓮舫氏や斎藤幸平氏は、具体的に何をしろというのか。「いったん立ち止まる」というが、立ち止まってどうするのか。再開発を中止するのか。その場合、神宮の森の維持コストは誰が負担するのか。

共産党のねらいは、外苑を収用して国有地にすることだろう。明治神宮が国営だった戦前の国家神道への逆戻りだ。この場合は維持コストは都民が負担することになる。つまり「コモンの共同管理」とは、そのコストを納税者に負担させることなのだ。

これが環境社会主義者のトリックである。コモンという美名のもとに私有財産を接収し、それを政治家や活動家が食い荒らす。これは再エネ議連や再エネタスクフォースもやってきたことだ。彼らも「電力インフラは公共財だからタダで使わせろ」と要求し、一部の業者が莫大な利益を上げている。

コモンを食い物にする政治家と活動家

100年前、ロシア共産党はコモンの名のもとに私有財産を否定し、インフラや生産手段を国有化した。その結果どうなったかは、誰でも知っている。国有化されたインフラは政治家や官僚に私物化されて経済は衰退し、社会主義経済は崩壊した。

その教訓は明らかである:コモンを守るという建て前は美しいが、それを国有化すると、市場の代わりに政治によって資源が配分される。それは膨大な腐敗をまねき、政治経済システムを破壊してしまうのだ。

斎藤氏の環境社会主義は、人類が100年かけて大きな犠牲を出した社会主義という実験をまたやろうとするものだ。彼はその時代を知らないが、蓮舫氏は知っているだろう。彼女の祖国の台湾がいまだに国と認められないのは、中国共産党の暴力革命の結果なのだ。

環境社会主義は、斎藤氏の主張する脱成長には適している。政治家や活動家がコモンを食いつぶすと、経済は衰退する。すでに日本は脱成長の道を歩んでいるが、脱炭素化と称する環境社会主義は電力インフラを政治の食い物にし、日本の衰退を加速するだろう。

今夜から始まるアゴラ経済塾「脱炭素化は地球を救うか」では、このような環境社会主義の問題も考えたい(申し込み受け付け中)。