ワームホール航法の基礎理論が発表されました。
3月9日に『Physical ReviewLetters』および『Physical Review D』に掲載された論文では、既存の物理学の常識を破らずに、ワームホール内部を航行し、銀河のあらゆる場所に1秒未満で到達する方法が提案されています。
ワームホール航法というと、なにやら怪しげな雰囲気を感じますが、論文が掲載され『Physical ReviewLetters』および『Physical Review 』誌は権威ある科学雑誌であり、信ぴょう性は高いでしょう。
つまり、ガチよりのガチな超光速理論というわけです。
有名な科学雑誌の査読に耐えた超光速理論とは、いったいどんなものなのでしょうか?
目次
- 人に安全なワームホール航法の基礎理論が発表!
- 1秒未満で銀河のあらゆる場所に移動できる
- 超光速時代の幕開けになるか?
人に安全なワームホール航法の基礎理論が発表!
ワームホールは1916年にアインシュタインの一般相対性理論の方程式にブラックホールの兄弟として現れる概念です。
しかし両者には大きな違いがあります。
ブラックホールが飲み込まれたら2度と出てこれない一方で、ワームホールには出口が存在すると考えられているからです。
この出口が別の星系や銀河にある場合、内部を通行することで光の速度を超えたかのような移動が可能になります。
そのためSFにおけるワームホールは一般的に、光の速度で何万年もかかる異なる地点をつないで瞬時に移動できる「旅の扉」として描かれます。
しかし真面目な物理学者たちは、ワームホールの内部を通ることは不可能だと考えていました。
「ワームホール内部を通過して出口に到達する」という前提において数学的な計算を行うと、負のエネルギーのような在り得ない存在が必要であると算出されるからです。
数学においてありえない結果(解)が算出される場合、前提が間違っているとされます。
しかし今回、マドリード・コンプルテンセ大学のサルセド氏らは3月9日に『Physical ReviewLetters』に掲載された論文において、ワームホールの内部を通過するのに、負のエネルギーを筆頭とした「在り得ない存在」を必要としないことを数学的に証明しました。
この結果は、通過可能なワームホールが存在することを主張します。
ただし、問題が1つありました。
サルセド氏らの提唱した数式を満たすワームホールは非常に小さく、量子レベルの微視的な通路だったのです。
量子レベルの大きさしかない通路では、人間が通過するのは不可能です。
しかし同じ3月9日に『Physical Review D』に掲載された別の論文では、理論上、人が安全にワームホール内部を通過できることが示されました。
論文が掲載された『Physical Review』は物理学において最も権威ある科学雑誌です。
この事実は、物理学界で最高の権威が、ワームホール航法について一定の評価を与えたことを示唆します。
そうなると気になるのが理論の内容です。
いったいどんなものなのでしょうか?