2019年8月8日、ロシア北部アルハンゲリスク州ニョノクサ近くにある、海軍の海上実験場で爆発事故が発生し、作業にあたっていた職員5人が死亡した。軍事施設での事故ということもあって詳しい状況は不明だが、事故直後から周辺の放射線レベルが急上昇しており、何らかの新兵器、それも核エネルギーを用いた実験に関わるものであることは、まず間違いないであろう。一部には、原子力推進によるミサイルの実験が失敗したのではないかという推測もある。
■謎だらけのレッドマーキュリーと小型核兵器
ロシアに限らずどの国でも、最先端兵器に関する情報は厳しく管理されており、現時点で真相を突き止めることは難しいが、ことロシアに関しては、数十年前からある特殊な物質を用いた新型核兵器の噂が根強く残っている。
その物質は、レッドマーキュリー(赤い水銀)と呼ばれている。水銀を主成分とし、赤い色をしているためこう呼ばれるのだ。
レッドマーキュリーの噂が西側に広まったのは、1970年代のことである。
このときレッドマーキュリーは、核反応の促進やステレス塗料の製造、さらにはICBMの精密誘導などに使用可能といわれていた。
中性子爆弾の開発に関わったアメリカの核物理学者サミュエル・T・コーエン博士もこのレッドマーキュリーの存在を認めており、「極く少量の特殊な核物質を通常物質に混ぜ、これを原子炉に投入するか、あるいは分子加速光線を当てることで製造される」とし、「起爆すると非常に熱くなり、強力な圧力を生み出すため、重水素と組み合わせて核融合反応を起こすことができる」と述べている。
通常の核融合爆弾、つまり水素爆弾は、周辺に原子爆弾を配置し、核爆発のエネルギーを利用して核融合を起こすものだ。したがって、全体のサイズは原子爆弾よりもさらに大きなものにならざるを得ない。ところが、このレッドマーキュリーと重水素を用いると、原子爆弾を用いることなく、非常に小さなサイズの水素爆弾を製造することも可能になるということである。