ちなみに、ECRでは、イタリアのジョルジャ・メローニ首相の「イタリアの同胞」(Fratelli d’Italia)が、ID会派では、フランスのマリーヌ・ルペン氏の「RN」がそれぞれ中心的な役割を果たしている。

欧州内の極右政党間で昨年から今年にかけて国を超えた話し合いが水面下で行われてきている。例えば、FPOとAfDは友好的な関係を維持している。FPOの招きを受け、ワイデル共同党首が昨年9月19日、ウィーン入りし、FPOのキックル党首と会合している。FPOは今年9月29日に実施予定の連邦議会選でトップに躍進することが予想されている(「極右『自由党』が支持率で独走」2023年9月3日参考)。

また、フランスの右翼ポピュリスト政党「RN」のマリーヌ・ルペン女史(国民議会議員会長)とAfDのアリス・ワイデル共同党首が2月初め、パリで会合している。欧州の代表的右翼政党の代表、それも女性同士の会合ということでメディアでも大きな話題を呼んだ。

両者間ではかなり突っ込んだ話し合いが持たれたという。ルぺン女史はAfDの移民政策「Remigration」(再移民、集団国外追放)について説明を求めたという。ルペン氏はワイデル党首に、「納得できなければ、欧州議会での会派としての連携を停止する」と脅迫したという。RNが近い将来、中道右派としてその過激な言動を抑えていけば、AfDとの連携は遅かれ早かれ難しくなることが予想される。AfDは欧州議会選前にID会派から追放されている(「ルペン女史とワイデル党首のパリ会合」2024年3月1日参考)

参考までに、ルペン氏の最大の政治課題は2027年の大統領選での勝利だ。ルペン氏が2011年に党指導部に就任したとき、ルペン氏の最初の関心事は当時まだ国民戦線と呼ばれていた党のイメージ改善だった。彼女は反ユダヤ主義的な発言をした党員を追放している。その中には彼女自身の父親、ジャン=マリー・ルペン氏も含まれていた。ただし、政治信条は大きくは変わらない。フランス・ファーストであり、国家、フランスの主権を強調し、大国を誇示、EUを批判、外国人嫌悪も強く、イスラム教徒に対しては批判的だ。

一方、ドイツではAfDだけではない。「価値連合」(Werteunion)と呼ばれる右翼保守団体が創設されたばかりで、9月実施予定の東独の3州議会選(テューリンゲン州、ザクセン州、ブランデンブルク州)に候補者を擁立する。「価値連合」は2017年3月に創設当初、メンバーは「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)の右派メンバーが大多数を占め、メンバー数は4000人と推定され、政治信条はCDU/CSUのそれに似ているが、AfDに対しては既成政党と異なり、排斥するのではなく、政策ごとに是々非々で検討、連携がプラスと判断すれば協調していく姿勢を取っている。そのため、他の政党からだけではなく、CDU/CSUからも「価値連合は極右派グループ」と受け取られている。

ハンガリーのオルバン首相は30日、ウィ―ンでの記者会見で、新会派「Patriots for Europe」に他の欧州政党を加え、欧州の右派勢力の最大会派にすると宣言し、欧州の右派勢力の核としてその指導力を発揮する意欲を見せている。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年7月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。