1. 異を許容する気持ち

    2つ目は異を許容する気持ちが生まれたことだ。

    独立前は会社員だったので、ものの見方が「会社員か?それ以外か?勤務先の規模や職種は?」という感じで、狭量な部分もあった。だが独立して育児も経験すると一気に多様性を許容する気持ちが生まれたと感じる。

    世の中には色んな職業の色んな考え方の人がいて、それぞれ違った視点で意見を持っている。全員を満足させることはできないので、ビジネスは自分を必要としてくれる人を見つけてその人に向けて解決策を提供し続ける活動という考えになった。むしろ、そうしなければ独立後のビジネスでは決して生き残っていけないからだ。また、同時にそれ以外の人もそれぞれの価値観で生きている同じ人間であり、自分と違った価値観を持っているがすなわち間違いではなくそれが多様ということだという考えである。

    「そんなの今の時代、当たり前でしょ」と思われるしれないが、SNSを見ると意外とそうでもない。異は差別や迫害、弾圧の対象であり、数の暴力と拡散力で攻撃をしあってそれぞれの派閥争いをしている。海外の話ではなく、日本国内でこそたくさんの派閥に別れて争いは絶えない。これでは異を許容するどころか、武力で自分の流儀を押し通すための実質的な戦争と何ら変わらない。

    昔は自分と合わない人を見つけたら、自分をわかってもらおうとしたり相手の間違いを指摘しようとしたりといった未熟な行動をしたこともあったが、独立してからは一切なくなった。自分は自分、人は人を完全に地で行くことができている。

  2. 他人と競争しない

    最後は他人との競争から降りることができた。これは本当に価値が高いと思っている。

    我々は生まれた時から自然に競争するように仕向けられている。そのすべてが悪いこととは思わない。特に優秀な人にとっては、競争心が強いことで忍耐と努力を作り、上を目指して駆け上がる動力にしている。一部のビジネスも時価総額やマーケットシェアを争うことで、よりよい商品サービスを作ることにつながっている。

    しかし、必ずしもすべての人が争い続けなくても生きていける。いわゆる「競争から降りる」という生き方だ。独立をするとそれが可能になる。実例をあげると筆者の地方の小規模の人気ケーキ店がそれにあたる。

    筆者自身が周囲が酪農家と農家ばかりの田舎に住んでいるが、この店舗は驚くほど繁盛している。全国区にはまったく知名度はないが、地元の人は誰もが知っている高級ケーキ屋なのだ。素材には地元のフルーツをふんだんにつかっており、地元の外へ手土産を持参する時はその店のケーキやお菓子を持っていくのが定番なのだ。

    休日には店の外まで長蛇の列を作っており、「こんな小さな町にこんなにたくさんの人が住んでいたのか」と驚くほどである。値段は地方の店舗とは思えないほど高く、いわゆる「東京プライス」なのに祝日は午前中で全商品売り切れてしまうこともあるくらいだ。

    この店舗、おそらく競争とは無縁の世界を生きている。まず立地は人里離れた林に位置しており、周囲に同業店舗はおろか店自体がない。チラシや広告を一切打たない。また、生ケーキが主力商品であり、地元栽培の素材を使っていることをウリにしているのでいくら天下のAmazonでもこの店舗のシェアを奪い取ることは難しいだろう。買い物客は地元を応援する気持ちもあってこの店舗を利用しているからだ。

    このように独立をすると自分だけの世界観を作ることができる。取り扱っている商品サービスはコモディティでも、消費者は誰からでもいいというわけではなく「あなたから買いたい」と指名買いされるようにすれば、ライバルは不在になる。他者を出し抜いたり、競争を意識する必要はなくなり、売上も安定化するのだ。

    独立をすると高飛車で拝金主義100%になりそうなイメージを持つ人もいるかもしれないが、意外にも性格は「丸くなる」部分もあると思っている。

     

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