自分を高く売ることの大切さ

もう一つ私が意識してることは、自分を安く売らないことですね。参加費を安く設定しすぎない。むしろ高く設定することを意識しています。理由の一つは、参加費を安くしても集客できるとは限らないからです。

多くの人は参加費を安くしたほうが集客できる。そう考えていると思います。しかし私自身は自分の経験から、このことについては懐疑的です。私自身も参加費を安く設定したことはあります。

たとえば一人あたり2000円に設定したりもしましたが、安くしたからといって集客できたかといえば、ほとんど変わらなかったというのが正直な感想です。むしろ、私の場合は安い時のほうが集客率が悪いのです。

もちろん、あくまで「私の場合は」ですので、人によっては安く設定したほうが集客ができるのかもしれません。これはぜひご自身で確かめてほしいことではありますが、安く設定すれば必ずしも人が集まるわけではないというのが私の実感です。

参加費が高いと集客のストレスが減る

また、参加費を高く設定するもう一つの理由は、集客のストレスを減らすためです。たとえば一人3000円のセミナーで10人集まったら売上は3万円です。もし一人あたりの受講料を1万円に設定すれば、3人で同じ金額を稼ぐことができます。

つまり、参加費を高く設定すればその分、人を集める必要がなくなるわけです。先ほども書きましたが、集客はプレッシャーやストレスを感じるものです。このストレスを極小化することが楽しくセミナー講師を続ける秘訣だと私は考えています。

だからこそ参加費を高く設定するようにしているのです。

価格を高くすると受講生の質が高くなる

実は、価格を高く設定すると受講生の質も高くなります。どういうことかというと、受講生の本気度が違ってくるのです。

私がセミナーを開催する時は一人あたり1万円以上いただくことが多いのですが、そうすると本当に困った人がセミナーを受けに来ます。たとえばタスク管理のセミナーの場合、長時間労働に本気で悩んでいて「絶対になんとかしたい!」という方が受講します。

参加費も安くないですから、気軽に受けに来る人はいないわけです。皆さん「変わりたい!」という強い気持ちで参加されます。私の話を真剣に聞かれますし、アドバイスをすると即実行される方が多いです。だから成果も出やすい。そうすると受講者もハッピーですし、私もハッピーになれます。さらにお金までいただけるという、ものすごく良い循環が生まれるのです。

またよく言われるのが、価格を高く設定するとマナーの良いお客さんが来るということです。私の場合は幸い変なお客さんに当たった経験はありませんが、友人や知人が困っているのを目にしたことが何度かあります。

たとえば申し込みをしたのに、参加費を期限までに支払わない人。当日にキャンセルをして同じく参加費を支払わないケースなどです。私の場合は価格を高く設定していることもあり、幸いこうした目にあったことがありません。

また、私のセミナー受講生は私をとても大切に扱ってくれる。そんなふうに日々感じています。たとえば私は1年継続型のセミナー(毎月のセミナーを1年にわたり開催するもの)の受講生に対しては、いつでも質問し放題というサービスを提供しています。何か質問があれば、メール等でいつでも私に質問していいよというサービスです。

こうしたサービスを提供すると、ガンガン質問が飛んでくる。そう思うかもしれません。しかし実際には、質問を受けることはそれほど多くはありません。おそらく私のことを配慮してくださっていて、質問があっても急ぎでない限り次回のセミナーで聞こうなどと、心がけてくださってるのだと思います。

「高い」と感じる人は、そもそもセミナーに来ない

前項を読んでいただいて、「価格は高く設定したほうがいい」ということはわかっていただけたかと思います。しかし、いざセミナーを開催しようと思った時、価格を高く設定しようとすると「こんな価格で開催してもいいのだろうか」「自分にこんな価格を設定する資格はあるのだろうか」 などと悩む人も出てくると思います。これは自然なことです。

もしそう感じたとしても、気にする必要はありません。勇気を出して、高い価格を設定してほしいと思います。そもそもその価格でセミナーを受けるかどうかを決めるのは「受講生」です。講師である皆さんではありませんよね。もし彼・彼女らが受講料を高いと感じれば、単純に受けに こないでしょう。それだけの話です。なので皆さんが気にする問題ではない。このことをまず理解することが大切です。

それでも、いざその価格で受けに来てくれる人がいると、「こんなにたくさんのお金をもらって申し訳ない」と思うかもしれません(私もそう感じていた時期がありました)。しかしここでも発想の転換が必要です。高い受講料を払うのは必ずしも受講者にとって悪いことではないということです。

価格が高いと受講生の満足度が高まる理由

たとえば私は昔、フォトリーディングという速読法の講座を受けたことがあります。2日間の講義で受講料は約10万円でした。

2日の講義で10万円は高額だと思います。でもこの10万円という高額な講座を受けたという体験は、私にとって良い思い出になっています。この講座を受けた自分を誇らしく思うところもあるのです。

もちろん、フォトリーディングの手法自体も、その後の読書に大きな影響を与えました。しかし、ここでお伝えしたいのは、高い価格がその講座の価値を高めることにつながる。そういう面もあるということです。

たとえばこのフォトリーディングの講座は、講師側の視点に立てば価格を5000円に設定しても収支はマイナスにならないでしょう。なぜなら10万円の講座とはいえ、何か特別高額なものを使って講義をするわけではないからです。

しかしこの講座が5000円だったとしたら、「特別感」は私の中でずいぶんと薄まったでしょう。この講座の価値は速読ができるようになることももちろんですが「10万円かけてフォトリーディングを身につけた」という体験自体に大きな価値があるからです。つまり、価格を高くすることはその体験の価値を上げることにもつながるのです。

このように、価格を高くすることは必ずしも受講する側からすると悪いことではないのです。むしろ価格を高く設定することで「自分はこの講座を受講したんだ」と誇らしく思えるかもしれません。価格を高く設定すると、その講座の価値は受講生の中で増すのです。

もちろん、いただく報酬に見合った価値を届けることは重要です。しかし少なくとも私の場合、価格が安くても高くても「全力でやる」という点は変わりません。低価格のセミナーだから情報を出し惜しみすることもありません。少なくとも私にとって価格の高低はセミナーの質に影響しないのです。

意識的に低価格のセミナーでは情報量を抑えて、高価格のセミナーの時だけすべての情報を提供する──そんなやり方もビジネスとしてはありかもしれません。しかし私はそうしたやり方は好きではないのです。

そう考えると、どうせ有料セミナーを開くんだったら高い価格をつけてやったほうがいい。少なくとも私にとってはこうした結論になるわけです。また、価格を高く設定することでそれに見合った価値を提供しよう。そうやって頭を使うようにもなります。

より早く講師としてレベルアップすることも考えると、価格を高く設定することはとても大切なのです。