そもそも、社会構造や技術条件等の経営環境の変化が連続的である限り、レガシーは発生しないのだから、どの企業においても、過去から承継した古いものを改善しつつ、未来に向けて小さな創造を積み重ねていくことは可能であり、事実として、それが企業と産業の成長の基本形であったわけである。

しかし、今や、ディスラプトという言葉が用いられるように、いたるところで、経営環境の変化が非連続になって断絶を生じつつある、即ち、レガシーを生みつつあるなかでは、一つの企業において、レガシーの価値を高めつつ、同時に全く新しいものの創造を行うことは、極めて困難になっている。

つまり、レガシーの価値を高める経営能力のもとでは、全く新しいものの創造はなされ得ず、全く新しいものを創造する経営能力のもとでは、レガシーの価値を高めることはできないのである。故に、レガシーは、売却されるのである。

森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行