車種の生産終了もずっと保守部品を供給

 上記ガイドラインが存在するにもかかわらず、なぜトヨタC&Dは下請けメーカーに対して不当な行為を行っているのか。ジャーナリストの桜井遼氏はいう。

「家電製品などでは製品の生産終了から一定期間が経過すると部品の生産も終了しますが、自動車の場合は製造から20~30年使用されるケースも珍しくなく、車種の生産終了もずっと保守部品を供給しなければならないというのが実情で、下請けメーカーに長期にわたり金型を保管させておくという慣習が残っています。国は以前から下請法違反なのでダメですよと言っており、保管させる場合は発注者側が費用を負担しなければならないというルールにはなっていますが、下請けに無償で保管させたり、十分な費用を払っていなかったり、他の発注と抱き合わせで費用を上乗せしてごまかしたりするケースも多いです。

 日産自動車による下請けへの不当減額問題が表面化し、自動車業界全体で“膿を出していこう”という機運が高まるなか、トヨタC&Dの下請けメーカーから公取委に通報などが入ったことで今回の動きにつながったとみられています」

 3月、日産が下請けの自動車部品メーカー36社への支払代金約30億2300万円を不当に減額していたとして、公取委が下請法違反を認定し再発防止を勧告。日産は下請けメーカーに対し、契約書で定められた発注額から「割戻金」として一部を差し引いた代金を支払っていた実態が表面化した。今回発覚した下請けイジメともいえる行為は、トヨタグループ全体でみられるものなのか。

「22年12月にトヨタ系部品メーカー大手のデンソーと豊田自動織機が、エネルギーコストや物流費などが上昇しているにもかかわらず仕入先と取引価格について適切な交渉を行っていないとして公取委から指摘を受け、それ以降、発注元による下請けに対する問題のある行為は見直していこうという空気になっていることは事実ですが、長年にわたりつくられてきたトヨタ自動車を頂点とするトヨタグループのピラミッド構造、そして発注元と下請けメーカーの関係は簡単には崩れないという見方が強いです」(桜井氏)