デジタル技術の進歩とともに、アートの世界も大きく変わりつつある。アート分野でのNFT※(Non-Fungible Token、非代替性トークン)実用化が進んでいるのだ。

NFT活用に着目し、世界のアート業界に新風を吹き込んでいるのがアラブ首長国連邦(UAE)発のデジタルアートプラットフォーム「10101.art」だ。アーティストとアート愛好家をつなぐ新たな形のマーケットプレイスとして存在感を示している。

Image Credits:10101.art

運営は2022年にドバイで設立されたばかりの同名スタートアップで、英国ロンドンにもオフィスを構えている。「10101」という名称は二進数の記号に由来するもの。デジタルの象徴であると同時に、新しいアートの時代を意味する。デジタル技術とアートの融合を象徴する意図が込められているという。

バンクシーやピカソ、ウォーホルの作品を販売

「10101.art」は、デジタルアートの創造、展示、取引を一体化したオンラインプラットフォームだ。ここで発行されるNFTは、物理的な絵画の共同所有権を証明するブロックチェーン証明書である。具体的な仕組みは以下の通り。

Image Credits:10101.art

① アート専門家がトップコレクターやオークションハウスから絵画を選定し、真贋を判定。
② プロジェクトマネージャーが10101.artでの展示を決定したらドバイに輸送、デジタル版を作成。
③ デジタル化された絵画の断片をNFTトークンにデジタル化し、NFT販売を開始。
④絵画が100%販売されると、NFTはさらに二次取引も可能となる。ユーザーは所有NFTを他のマーケットプレイスでも売買できる。

売買に伴う手数料は二次市場においても発生するため、10101.artはそこから利益を得るというスキームだ。絵画が完売しなかった場合には、NFTはバーン(消去)され、購入者には返金オプションが提供される。

Image Credits:10101.art

これまでにバンクシー、ピカソ、ダリ、アンディ・ウォーホルなどの作品がデジタルで断片化され販売されてきた。作品はドバイのDIFC(国際金融センター)にあるモナダアートギャラリーで一般公開されている。

NFT市場規模はCAGR34.5%で成長予測もアート分野は波乱含み

Grand View Researchの報告によると、NFT市場規模は2023年には約269億米ドルに達した。CAGR34.5%という驚異的な伸び率で成長し続け、2030年までに800億米ドルを超える見込みという。特にUAEにおいては、多くの富裕層や投資家の存在やデジタル技術の成長の後押しもあり、さらなる拡大が期待できよう。

ただし、NFTアート市場の方は予断を許さない状況となっている。The Art Basel & UBS Art Market Report 2023によると、2021年に急成長を遂げグローバルで2.9億米ドルの売上に達した。それ以降アート関連のNFT販売は減少、2023年には約1.2億ドルとなった(それでも2020年市場規模の60倍以上ではある)。NFT市場全体においても、アート関連の割合は2020年の67%から2023年には16%にまで減少した。

10101.artとしては設立翌年に市場規模の激減に見舞われた状況だが、同社は4月15~16日にドバイで開催された「 Blockchain Life Forum 2024」にてベストスタートアップ賞を受賞。15日夜にはモナダアートギャラリーでローンチイベントを開催、大きな節目を迎えたとした。年内のプランとしては他に、トークンを検索・購入・管理できるモバイルアプリリリース、分散型自律組織(DAO)の導入などが控えている。