2024年から2032年にかけて年平均27.1%での成長が見込まれる市場がある。ジェスチャー認識市場だ。「ジェスチャー認識」は人の動きをカメラで検知しジェスチャーとして解析する技術で、システム上で特定のアクションを実行可能にするというものだ。
Fortune Business Insightsの調査によれば、2024年の市場規模は247億ドルに上り、2032年には1690億ドルに達する見込みだ。
今後もジェスチャー認識市場のさらなる盛り上がりが期待されるなか、カナダ発のスタートアップであるMotion Gesturesは人間の「手」によるハンドジェスチャー認識に特化したAIソフトウェアを開発している。
AIと機械学習への造詣が深い2人が設立
Motion Gesturesは「AIでハンドジェスチャー認識技術に変革を起こす」ため、2017年に設立された。同社を設立したのは、Kashif Kahn氏とArash Abghari氏の2人だ。CEOでもあるKashif氏は、ペンシルバニア大学で経済学とコンピュータサイエンスを専攻。卒業後はマッキンゼーやクレディ・スイスといった世界的な企業で活躍した。2004年にはAIによる言語認識技術を手掛けるスタートアップも立ち上げている。
一方、CTOを務めるArash氏は機械学習の分野で修士号を取得している人物だ。Motion Gestures起業前は、イランやカナダの企業でハードウェアやソフトウェア開発に携わっていた。
ジェスチャー認識技術の鍵となるAIや機械学習に造詣の深い2人は、Motion Gestures立ち上げにうってつけのコンビと言えるだろう。
ハンドジェスチャーを変革するさまざまな機能
Motion Gesturesの公式YouTubeアカウントには、手の動きだけで(画面に触れずに)端末を操作するシーンや、車のドアを開ける場面などの動画が上がっている。
これを可能にする技術のいくつかを紹介しよう。
Motion Gesturesのジェスチャー認識では、2Dのカメラ映像から、手を3Dの状態で認識することができる。次の画像のとおりだ。
次の動画のように、手が重なった状態でも左右の手を見分けられる。より複雑なジェスチャーにも対応できることだろう。
さらに、ハードウェアの機能に左右されないのも強みだ。手の動きを捉えるカメラの解像度やコンピューターの処理能力が一般的なものであっても、問題なく機能するという。次の動画では、32×32という低解像度のカメラで手の動きを認識している様子が見て取れる。
ジェスチャーをカスタマイズする際、膨大なデータを収集する必要はない。Motion GesturesのAI・機械学習のアルゴリズムは、少量のデータから多くの推論を実行することが可能だ。そのため、これまでのアプローチと比べ、開発時間とコストが10分の1程度で済む。