原子力小委の体たらく
総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長:黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所所長・教授)が6月25日、4か月ぶりに開かれた。
原子力少委の検討内容はエネルギー基本計画に直結している。よって、5月15日に経産省が第7次エネルギー基本計画の策定に着手したことを受けて、実に4か月ぶりに原子力小委員会が開催されたのである。
この会合において、「原子力に関する動向と課題・論点」(資源エネルギー庁)という資料が議論された。「議論された」というのはウソで、ここに資源エネルギー庁、つまり官僚の基本方針というかドクトリンが示され、小委員会では一定の時間をかけてこの内容を委員に流布・納得させ、小委としての原子力政策の束としてエネルギー基本政策策定会議に投げられるのである。
この資料をサーベイすればたちまちにしてわかることがある。それは、原子力発電がどのような根本原因ゆえに進まないのかという分析がない。また、課題は曖昧さを多大に含んでおり、司司(つかさつかさ)で誰が何をするという規定もない。
具体的に課題をひとつひとつ丁寧に掲げ、それに応じて実施内容を分析し、誰がやるのか、そして資金はどうするのか、組織はどうするのか、規制はどうするのか——その具体的な像がこの資料からはまったく見えてこない。つまりボケボケにボヤけてあるのである。
腰砕け、見せかけのDX・GXこんなボケまくっている政策を鵜呑みにさせられる委員会の先生方も気の毒といえば気の毒であるが、腰砕けの体たらくというほかない。
巷間、原子力がなくても再エネ(太陽光、風力)でやっていけるという声もかまびすしいが、太陽光は夜間はゼロ、日本全域が曇りや雨、そして風が吹かない日もある。不安定電源なのでいざという時に頼りにならない。また、周波数の乱れがあること、安定した高圧電源が取れないことは産業を支えて行くには致命的な欠陥である。
要するに、日本のような高度に発達した産業を支えて行くには原子力発電は欠かせない。さもなくば日本はエネルギー後進国に落ちぶれて行き、DXやGXにチャレンジして行く道は塞がれる。
原子力発電の大規模な新設こそが陥落への道からわが国を救う。そのためには、4つの壁を乗り越えるべく実質感と、実行可能性が見える原子力政策の策定が欠かせない。