政府は第7次エネルギー基本計画の策定を始めた。
前回の第6次エネルギー基本計画策定後には、さる業界紙に求められて、「原子力政策の180度の転換が必要—原子力発電所の新設に舵を切るべし」と指摘した。
その後、機会があるごとに、わが国がグリーントランスフォーメーション(GX)を乗り切るためには原子力発電所の新設が急務であると言い続けてきた。
GXにチャレンジし成し遂げて行くためにはデジタルトランスメーション(DX)による体力と競争力の増強が必須である。そのDXのためだけにも大型原発の新設が急務だと。当面の目標は100万kW級原子力発電所100基の新たな建造である。
昨年末にUAEドバイで開催されたCOP28において、国際原子力機関(IAEA)は、世界の原子力発電を2050年までに3倍にすることを宣言した。当然ながら日本もこれに賛同した。
原子力発電所が審査や建設を経て実際に発電するまでには、ゆうに10年はかかる。今すぐにも新設に着手しなければ、日本はDX/GXに乗り遅れるばかりか、電気料金は高騰し続け、家計を逼迫し、産業は衰退して行く。
日本はたちまちにしてエネルギー貧国に落ちぶれて行くのである。
原発新設を阻む4つの壁現状のままでは原発新設はまったく進まない。なぜなら、頑として強固な壁が4つもあるからだ。
電力システム改革の見直し、 原発新設に特化した資金調達システムの整備、 原子力賠償法の見直し、 原子力規制の根本的改革の4つである。
電力システム改革、なかでも電気の小売の完全な自由化は電気事業者の首を絞めて大型投資ができなくしてしまっている。そればかりか、需要家(家庭や企業)の電気料金を釣り上げている。そのような中で、電気事業者が原子力発電所を新たに建造するには、資金調達システムが欠かせない。かつての総括原価方式に替わるシステムである。
大型原発1基の建造には、6000億円から1兆円必要だとされている。電力自由化の大波を被った大手電力事業者には、そのような大金を幾重にも用意できる体力はもうない。
福島第一原子力発電所事故の後、従来の原子力賠償法を見直す動きがあった。しかし、結局のところ何も変わらず、原子力事故が起こった際の賠償は、今もって事業者には事実上の〝無限責任〟のまま放置されている。
事業者の賠償限度額に上限を設けて有限責任とし、あとは国が対処するべく法改定が急務。原子力規制委員会は根拠のない気違いじみた〝世界一厳しい安全基準〟を標榜し、原発新設を阻んでいる。原子力規制の正常化なくして新設などありえない。