nTVのヤン・ゲゲル記者は「トランプ氏との討論会はバイデン氏にとって災難だった。この討論会でバイデン氏を見るのは痛ましい。81歳の彼は、不安定で混乱し、常に理解できるとは限らないかすれた声で自分自身を解体していった」として、「バイデン氏が米大統領に残る可能性はほとんどなくなった」と指摘しているほどだ。
バイデン氏と比較すると、78歳のトランプ氏は完全に健康であるように見えた。彼は罵り、非難するが、彼のメッセージは常に暴力性を含んでいることは良く知られている。討論会でバイデン氏が国境警備に関する質問に答える中、トランプ氏は「彼が最後に何を言ったのか本当に分からない。多分、彼自身も(何を言ったか)知らないのではないか」と冷笑するほど、余裕を見せていた。
バイデン氏にとって、第1回TV討論会の目標は、「自分があと4年間米国大統領を務めることが体力的にも精神的にもできるかについての疑念を払拭したい」というものだったはずだが、疑惑はむしろ大きくなってしまったのだ。
「バイデン氏がトランプに次期米国大統領にならないことを望み、自身が言ってきた米国の魂を救い、米国の民主主義を守りたいなら、彼は立候補を放棄しなければならない」という声がリベラル派のメディアだけではなく、民主党内でも聞こえ出している。
バイデン氏に代わって、カルフォルニア州のギャビン・ニューサム州知事(56)やミシガン州のグレッチェン・ホイットマー州知事(52)らの名前が挙がっている。オバマ元大統領のファーストレデイ、ミシェル・オバマ夫人(60)の名前も聞かれる。民主党は8月19日、シカゴで民主党全国大会を開催して大統領候補者を正式に決定することになっている。
バイデン氏自身は28日、選挙運動を続け、ノースカロライナ州のファンに「以前ほど討論がうまくできなくなった」と認めたものの、「私ならこの仕事ができると信じている」と強調し、再選を目指す意思を重ねて表明している。バイデン氏を説得し、再出馬を断念させることができるのはファーストレデイのジル夫人しかいないのかもしれない。
これまでメディアは「トランプ氏がホワイトハウスにカムバックしたならば」という仮定(「もしトラ」)でさまざまなテーマを論じてきたが、27日夜の第1回TV討論会後、メディアの関心は「バイデン氏が再出馬を断念したならば」という仮定(「もしバイ」)に焦点を変えてきている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年6月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。