今年11月の米大統領選挙を占う第1回大統領候補者TV討論会が27日夜(日本時間28日)、南部ジョージア州アトランタで行われた。当方は6時間の時差の関係で28日未明、CNN放送の中継を観た。81歳のジョー・バイデン現大統領と78歳のドナルド・トランプ前大統領間の直接討論は4年ぶりだ。両者は経済、人口妊娠中絶、不法移民問題、外交政策をめぐって論戦を交わした。
事前に予想されたことだが、両者間で激しい罵倒・中傷する場面があった。特筆はバイデン氏がトランプ氏に「お前は路上の猫(ストリートキャッツ)だ」と誹謗したことだ。現職の大統領が討論会で相手をそのような表現で中傷したのだ。バイデン氏は明らかにレッドラインを超えていた。
バイデン氏がトランプ氏に対し、「あなたは有罪判決を受けた重罪犯罪者だ」と呼べば、トランプ氏は「お前の息子こそ重犯罪者だ」といった類の言葉が飛び出した。予想された範囲の中傷合戦だが、世界の指導国家を自負する米国の大統領職を目指す政治家は最低限度の品位を守るべきだろう。
ちなみに、米大統領選ほど勝者と敗者がはっきり分かれてくる選挙はめずらしい。政権が交替した場合、勝者はその日からワシントンに居住を探し、敗者は荷物を整理してワシントンから出ていく。首都ワシントンでは選挙後、総入れ替えが行われるのだ。
TV討論会後の世論調査では民主党系のリベラルなメディアですら「トランプ氏が勝利した」と受け取っている。メディアの関心はどちらが第1回TV討論会の勝利者だったかというではなく、バイデン氏は大統領職を務めることができるか、といったテーマに移ってきたのだ。
ドイツ民間ニュース専門局nTVの視聴者への調査によると、約60%が「バイデン氏は再選出馬を諦めるべきだ」と答えていた。ドイツを含む欧州ではトランプ前大統領には批判的な論調が多い。それゆえに、「民主党がバイデン氏の候補に拘るのならば、トランプ氏が勝利する可能性が高い」という危機感が高まってきたわけだ。バイデン氏に代わって民主党は誰か別の候補者に擁立すべきだというわけだ。バイデン氏もトランプ氏もまだ正式な民主党、共和党の大統領候補者ではない。