銅板を挟み込んだ新しい水生成システム!従来の2~5倍の効率

研究チームは、排熱の利用だけでなく、さらなる効率化を求めて、新たなシステムを設計しました。

彼らの新システムでは、銅を利用した吸着フィンを採用しています。

新しい水収集システム。フィンの間に銅板が挟まっている
新しい水収集システム。フィンの間に銅板が挟まっている / Credit:Xiangyu Li(MIT)et al., ACS Energy Letters(2024)

フィンの表面には、従来通り、吸着剤としてゼオライトがコーティングされています。

そして薄いフィンを少しの間隔をあけて複数並べることで、湿った空気が接する面を広くし、効率的に水を吸着できるようにしました。

加えてフィンの内部には銅板を挟み込んでいます。

フィンの加熱には排熱を利用しますが、銅板は高い熱伝導率と耐腐食性の点でメリットがあり、フィンの内部に銅板を挟み込むことにより、水の「吸着」と「加熱による放出」のサイクル効率が高まります

そして研究チームが概念実証のために行った実験では、約2mm間隔で10枚のフィンを並べた装置が使用されました。

空気から飲料水を生成する新システム。従来よりも2~5倍の効率
空気から飲料水を生成する新システム。従来よりも2~5倍の効率 / Credit:Xiangyu Li(MIT)_Small, adsorbent ‘fins’ collect humidity rather than swim through water(2024 EurekAlert)

この装置では、1時間以内にフィンの水分は飽和し、加熱によって水を放出できました。

24回の収集と放出のサイクルを繰り返すことで、湿度30%の環境下で、1リットルの吸着剤当たり、1日1.3リットルの飲料水を生成できると分かりました。

これは従来のシステムの2~5倍もの効率を実現していることになります。

さらに排熱を利用するため、エネルギー効率も非常に高いと言えます。

この新しいシステムが発展するなら、水不足が深刻な地域でも、飲料水を供給できるようになるでしょう。

特に、砂漠のような乾燥地帯では活躍するかもしれず、大きな期待が集まっています。

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参考文献

Small, adsorbent ‘fins’ collect humidity rather than swim through water
https://www.eurekalert.org/news-releases/1048856?

Harvesting Drinking Water From Air With Innovative Absorbent Fins
https://scitechdaily.com/harvesting-drinking-water-from-air-with-innovative-absorbent-fins/

元論文

Design of a Compact Multicyclic High-Performance Atmospheric Water Harvester for Arid Environments
https://doi.org/10.1021/acsenergylett.4c01061

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部