唐辛子をよく食べる人たちはどういう人か考えよう
実のところ、辛い食べ物をよく食べる人たちが肥満傾向なのは以前から示されています。
例えば、40万人以上を調査対象とした中国の大規模調査をもとにした2014年の研究では、辛い食べ物をよく食べている人たちのBMIが高いことが明らかになっています。
今回の研究を実施した研究者らは、唐辛子の摂取頻度と肥満との関係を調べる際に、遺伝、環境、食事、生活習慣の影響を考慮する必要があることを前置きした上で、唐辛子をよく食べる人は高カロリーかつ不健康な食事をしがちな可能性があると考察しています。
要するに、高カロリー・高脂肪の食事と一緒に唐辛子を食べるために、結果的に体重が増えてしまうおそれがあるということです。
では唐辛子の利用の仕方に問題があるだけで、カプサイシンの健康効果自体は事実なのでしょうか?
唐辛子の辛味成分であるカプサイシンの効果に関する研究を見ても、脂肪燃焼や食欲と満腹感をコントロールするなど、ダイエットにプラスに働く効果を認めた研究は確かに報告されています。
しかしその一方で、報告されるような効果が認められないと反論する研究や、唐辛子を過剰にとると食べる量がむしろ増えることにつながる可能性を示した研究もあります。
こういった先行研究の食い違いは、重要な条件を見落としている可能性や、カプサイシンの効果が考えているより複雑なメカニズムである可能性を示唆しています。
そのため、今回の研究者らは、唐辛子を食べることと肥満の関係のメカニズムを明らかにするためには、今後さらに研究を深めていく必要性があると述べています。
今回発表された研究は、限定された地域の特定の集団について一定期間調査した結果に過ぎず、分析についても関連性のみに着目した横断研究です。そのため因果関係を解き明かすものではありません。
しかし、唐辛子を食べることのダイエット効果に疑問を投げかける結果であることに違いはありません。
ダイエット効果があると思い込んで鍋料理に唐辛子を入れたとしても、肝心の鍋の中身が高カロリー・高脂質の食べ物ばかりであれば、唐辛子がなくても低脂質な野菜や魚介類が中心の鍋にダイエット効果で負けてしまうのは当たり前です。
私たちは健康効果のある食材が入っていると言われると、高カロリーの食事でも食べて問題ないと考えてしまいがちです。
しかし、ささやかな健康効果を言い訳に、カロリーの高い食事を続けていればどんどん太ってしまうのは仕方のないことかもしれません。
参考文献
Does eating chili pepper decrease or increase obesity risk?
元論文
Does chili pepper consumption affect BMI and obesity risk? A cross-sectional analysis
Spicy food consumption is associated with adiposity measures among half a million Chinese people: the China Kadoorie Biobank study
ライター
髙山史徳: 大学では健康行動科学、大学院では体育学・体育科学を専攻。持久系スポーツの研究者として約10年間活動。 ナゾロジーでは、スポーツや健康に関係する記事を執筆していきます。 価値観の多様性を重視し、多くの人が前向きになれる文章を目指しています。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。