glafit株式会社(以下、glafit)は6月26日(水)、開発中の新技術「リーンステア制御」を搭載した四輪型特定小型原動機付自転車のプロトタイプを公開しました。同日にはメディア向けに発表会が実施され、機構や開発背景の説明のほか、デモ走行と試乗会も行われました。
高齢者の移動手段へ新しいアプローチ
2023年7月に新設された車両区分「特定小型原動機付自転車(以下、特定小型原付)」は、16歳以上なら免許不要で乗れる電動モビリティです。
電動キックボード・電動自転車などさまざまな種類が開発されており、走行モードの切り替えで車道・歩道のどちらでも走行が可能。これにより、地方の過疎地域などにおける公共交通機関の縮小や、住民の高齢化が引き起こす「買い物難民問題」をはじめとした移動問題への新たなアプローチとして期待されているそうです。
また、昨今、社会問題化している高齢者の運転による交通事故で、高齢者の免許返納制度が推進されるなか、免許返納後の移動環境問題も取りざたされています。
内閣府によると、国内の高齢者人口(65歳以上)は、2019年に3,589万人と総人口の28.4%に達しました。2036年には3人に1人が65歳以上になることが推計され、高齢化が一層進むなかで免許返納後の高齢者は移動の自由が確保できないという問題を抱えてしまうといいます。
glafitは、特定小型原付をこの問題を解決する手段として注目していますが、代表取締役の鳴海禎造氏は「二輪では不安がある、という声が高齢者やその家族から多数上がっています」と、現状を説明。特定小型原付の選択肢の幅を広げるために、四輪タイプの特定小型原付の開発に至ったそうです。
四輪型特定小型原動機付自転車のプロトタイプ。左側に立つのはgrafit代表取締役の鳴海禎造氏
特定小型原付は「車体の長さ1.9m×幅0.6m以下」「時速20kmを超える速度を出すことができないこと」「原動機として、定格出力が0.60kW以下の電動機を用いること」などの条件があります。
特に車幅0.6m以下というのは、一般的な乗用車の車幅の1/2~1/3倍となり、仮に1/2倍になったとすると同じ段差高を乗り越えたときの車体の傾きは2倍に、耐横転性は1/2倍になってしまうといいます。
その問題を解消するため、glafitは株式会社アイシン(以下、アイシン)が開発中の「リーンステア制御」を四輪特定小型原付に装備。車速やハンドル角などの情報に基づき、車体の傾斜角をアクチュエータ(エネルギーを機械の動作に変換する装置)を用いて制御する技術で、二輪車並の車幅においても高い自立安定性が実現できるそうです。
四輪特定小型原付の開発において、鳴海氏は「高齢になってきたのでクルマをやめて今日からシニアカーにしなさい、と言われても抵抗感があると思います。ほかに選択肢がないからシニアカーで移動を代用するのではなく、高齢になる前から日常的に使用し、免許返納後も『この乗り物があるから大丈夫』と思えるような第3の選択肢としてアプローチしていきたい」と、意気込みを語りました。