ところ変われば文化も変わり、交通事情も異なるものです。国内においても地域によって交通マナーには多少の違いが見られますが、国をまたげばそのギャップも大きくなるものでしょう。
はたして海外から見たときに、日本の交通ルールやマナーはどのように映るのでしょうか。今回は海外から日本に移住した方や、海外暮らしの長い方に「日本のおかしな交通事情」について話を聞きました。
目次
日本は「歩行者保護」の観点が薄い?
自転車にとって過酷すぎる日本の道路
日本は「歩行者保護」の観点が薄い?
まずお話を伺ったのは、フランスから日本に移り住んで7年になるという女性です。彼女が疑問に感じていたのは、国内においてもたびたび問題となる「横断歩道」上でのマナーについてでした。
「これは自分が歩行者のときに思うことですが、信号のない横断歩道で車が全然止まってくれないことに驚きました。フランスでは止まってくれない車の方が珍しいので、カルチャーショックでしたね。
私が日本で普段接している人は優しい人ばかりなのに、なぜ横断歩道ではアグレッシブな車ばかりなのか、今でも不思議に思います」(30代女性・フランス出身)
日本の道路交通法においても、信号機のない横断歩道上での歩行者優先義務が明記されており、横断中または横断しようとしている歩行者がいる場合には「一時停止」で道を譲るものとされています。
近年においては歩行者優先ルールの周知徹底や、取り締まりの強化の動きが見られますが、依然として横断しようとしている歩行者を無視して進む車両が多いことも事実でしょう。
一方のフランスにおいては、日本に比べてかなり歩行者の立場が強いのかもしれません。一例として、ストラスブール大学のセドリック・シュウール氏らがフランスのストラスブールと名古屋の横断歩道で行った調査によると、赤信号で横断歩道を渡る歩行者の割合は名古屋で2.1%だったのに対し、ストラスブールでは41.9% と、顕著な差が見てとれました。
自転車にとって過酷すぎる日本の道路
次に挙げられた内容も、「車とその他の交通主体の関係」についてのものでした。ドイツに6年間滞在していた日本人男性は次のように話します。
「帰国して印象的だったのは、公道で自転車に乗るのがめちゃくちゃ怖かったことですね。
私が住んでいたミュンヘンではかなり自転車道の整備が進んでいて、単純に舗装の色で車道と分けているケースもありますが、少し自転車道を高くするなど工夫してゾーニングしていました。交差点でも自転車が横断するためのレーンがあって、場所を問わず安心して乗れましたね。
私がドイツに滞在する前後で、日本にも自転車専用レーンが増えた印象ですが、基本的に幅が全然足りなくて、ほとんど車道と区別できないレーンも多いですよね。『車が自転車レーンに入らないと走れない』みたいなところもありますし、今でも車との近さに肝を冷やす場面が少なくありません。
ゾーニングがきっちりできていないので、自転車と車の間にも心理的なギスギス感があるというか。邪魔だと思われているのを自覚しつつも車道を走らないといけないので、精神がかなりすり減ります」(40代男性・ドイツから帰国)
自転車の「車道走行ルール」については、国内でも頻繁に議論が起きており、自転車専用レーンの整備が進んでいないことなどを問題視する声も少なくありません。
なお2020年の国勢調査によれば、日本国内で通勤・通学の際に自転車を利用している人は14.3%という結果でした。一方、統計情報を扱うstatistaのデータによれば、ドイツにおいて同様の割合は25%に上るといいますから、やはり自転車専用レーンに対するニーズも大きいと考えられます。
もちろん国内においても、「自転車を安全に利用したい」という思いを抱えている人は多いでしょう。歩行者や自転車、車やバイクと、速度域も強度も異なる交通主体がそれぞれ安心して通行できる環境整備が求められます。