文献をもとに、これまでの経緯をまとめると、以下のようになります。
小泉政権において、「改革なくして成長なし」の号令の下で進められた構造改革の流れの中で、2006年に「経済成長戦略大綱」が作られた。その施策内容は「骨太方針2006」に盛り込まれ、経済成長戦略は歳出・歳入一体改革と車の両輪であると位置付けられた。 第2次安倍政権において、日本経済再生本部の下に置かれた産業競争力会議を中心に検討が進められ、「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」が閣議決定。日本産業再興プラン、戦略市場創造プラン、国際展開戦略を柱とし、各分野の政策群ごとに成果指標(Key Performance Indicator: KPI)を定めて進捗管理を行うとした。 菅義偉政権の発足に伴い日本経済再生本部という枠組みが改められ、「骨太の方針の下、我が国経済の持続的な発展に向け、成長戦略の具体化を推進する」として成長戦略会議が置かれ、「成長戦略実行計画」が閣議決定された。この経緯を見ていくと、成長戦略は、構造改革や日本再生戦略などの大きな政治の流れの中で、まずは骨太の方針を補完するものとして策定され、その後、より成長を志向した経済政策について「中長期的な目標に対する、より具体的な計画(工程表や数値目標を伴うもの」として作られてきた、と解釈してもいいかもしれません。
成長戦略は、その成り立ち故に、骨太の方針の特に経済政策の項目としては重複するところが少なくありません。骨太の方針で全体の方向性を示し、成長戦略はよりそれをより具体的な内容を示すものと考えるとわかりやすいかもしれません。
骨太の方針も、成長戦略も、どちらも閣議決定される重要文書です。上記の位置づけの違いを頭に入れた時に、より個別の政策やビジネスを実現したいと考えるなら、どちらに記載されているほうがベターなのか?と考えていく方法もありそうです。
実際、企業や力のあるNPOの担当者は、自分たちが実現したい政策が成長戦略に掲載されるよう、積極的に働きかけを行っています。
ではここからはより具体的に、最近発表されたばかりの「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」について詳しく見ていきながら、成長戦略を策定するプレイヤーやそのスケジュール、さらには、そこに民間からの意見を反映させるためにどのような働きかけが可能なのかについて、見ていきます。
(この続きはこちらのnoteから)
(執筆:西川貴清、監修:千正康裕)
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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2024年6月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。