第4条「いずれかの締約国が一国または複数の国から武力侵攻を受け、戦争状態に置かれた場合、他方の締約国は、国際連合憲章第51条および朝鮮民主主義人民共和国およびロシア連邦の法律に従い、遅滞なくあらゆる手段で軍事的およびその他の支援を提供する」 (「露朝新条約」の第3条,第4条は、北大西洋条約機構=NATOの第5条(集団防衛)とほぼ同じ内容だ。)
Article 3
The Parties shall work hand in hand to ensure durable regional and international peace and security.
In the event of the creation of a direct threat of an act of armed aggression against either Party, the Parties shall, at the request of either Party, adjust their positions and activate the bilateral negotiating channels without delay for the purpose of agreeing on possible practical measures to provide cooperation in eliminating the threat created.
Article 4 In the event that either Party is armedly invaded by an individual State or States and is placed in a state of war, the other Party shall, without delay and in accordance with Article 51 of the Charter of the United Nations and the laws of the Democratic People’s Republic of Korea and the Russian Federation, provide military and other assistance by all means at its disposal.
第5条に入ると、「各締約国は、他方の締約国の主権および安全、領土の不可侵性、政治、社会、経済および文化の制度を自由に選択および発展させる権利、ならびに他方の締約国の他の重要な利益を侵害する第三国との協定を締結しないこと、およびそのような行動に参加しないことを約束する。いずれの締約国も、他方の締約国の主権、安全および領土の不可侵性を侵害する目的で第三国がその領土を利用することを許さない」と言及している。
第5条は国連安全保障理事会の対北朝鮮決議や欧州連合(EU)の対ロシア制裁などを暗に示唆し、ロシアと北朝鮮両国は締結国の権利を擁護し、それらに同意しないことを謳っている。第6条、第7条でその趣旨を明記。そして第8条で「防衛能力を強化するための共同措置を講じるための機関を設立する」と宣言している。
Article 5 Each Party undertakes not to enter into agreements with third countries and not to participate in actions that violate the sovereignty and security of the other Party, the inviolability of its territory, the right to freely choose and develop its political, social, economic and cultural institutions, and other vital interests of the other Party.
Neither Party shall permit any third State to utilize its territory for the purpose of violating the other Party’s sovereignty, security, and territorial inviolability.
第9条、第10条で「締約国は、食料およびエネルギーの安全保障、情報および通信技術の安全保障、気候変動、健康、供給チェーンなどの戦略的意義のある分野における増大する挑戦および脅威に共同で対処するために協力する」、「締約国は、貿易、経済、投資、科学技術の分野での協力の拡大および発展を促進する」、「締約国は、二国間貿易の量を増加させ、税関、金融および金融分野などの経済協力のための有利な条件を創出」「締約国は、宇宙、生物学、平和的な原子力エネルギー、人工知能、情報技術などの分野を含む科学技術の分野での交流および協力を発展させ、共同研究を積極的に奨励する」と記述され、第12条は「両国は、農業、教育、健康、体育、文化、観光などの分野での交流および協力を強化し、環境保護、自然災害の予防および災害後の対策に協力する」等々、明記している。
そのほか、国際テロリズムおよび過激主義、国際的な組織犯罪、人身売買、人質の取り、違法移民、不正な金融フロー、犯罪手段で得た収入の合法化(洗浄)、テロリズムの資金提供、大量破壊兵器(WMD)の拡散の資金提供、市民航空および海上航行の安全に対する脅威をもたらす違法な活動、物品、資金、金融手段、麻薬および向精神薬およびその原料、武器、文化的および歴史的な遺物の不正な流れなどの挑戦および脅威に対する闘いで相互に協力する(第17条)。
興味深い点は「締約国は、インターネット通信ネットワークの管理における国家の平等な権利を主張し、情報通信技術の誤用によって主権国家の尊厳およびイメージを損なうことおよびその主権権利を侵害することに反対する」と述べていることだ(第18条)。
そして第22条で「本条約は批准を受け、批准書の交換日に発効する。本条約の発効日から、2000年2月9日に採択された『朝鮮民主主義人民共和国とロシア連邦との間の友好、善隣および協力に関する条約』は失効する」と宣言し、第23条で「本条約は無期限に有効」とする。いずれかの締約国が本条約の効力を停止したい場合、他方の締約国に書面で通知する。本条約は、他方の締約国が書面通知を受け取った日から1年後に失効する。本条約は、2024年6月19日に平壌で、朝鮮語とロシア語の両方で2部作成され、両言語の文書は同等の効力を有する」と記述している。
最後に、「露朝新条約」を一読して感じることは、同条約がロシアと北朝鮮の軍事協力面を含むほぼ全分野を網羅した文字通り「包括的戦略パートナーシップ」だということだ。それゆえに、北朝鮮のこれまでの最大の同盟国・中国共産党政権が快く感じないのは当然かもしれない。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年6月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。