昨季から続く悪い攻撃配置

GKや最終ラインからのパス回し(ビルドアップ)における選手配置が悪く、ゆえに相手チームの最前線からの守備(ハイプレス)の餌食となるケースが昨2023シーズンから続いている湘南。基本布陣[3-1-4-2]のウイングバック、及び[4-4-2]のサイドバックが自陣後方タッチライン際でボールを受けることで片側のパスコースを失い、相手選手に寄せられては次のプレー選択に困る。今季序盤もこの現象をなかなか改善できなかった。

特に[4-4-2]の布陣で臨んだ試合の攻撃配置の悪さは顕著で、第5節セレッソ大阪戦の前半22分には、湘南DF杉岡大暉(左サイドバック)が自陣後方タッチライン際且つ相手サイドハーフ(ウイングFW)の手前に立ってボールを受けてしまっている。これと同時にC大阪MFルーカス・フェルナンデスに縦のパスコースを塞がれた杉岡は味方DFキム・ミンテへのバックパスを選んだが、この軌道が逸れて相手ボールとなり、大ピンチを招いている。[4-4-2]の初期配置からどのように隊形変化し、相手のハイプレスを掻い潜るのか。この点を全く突き詰められていないことが、この試合で証明されてしまった。

また、[3-1-4-2]で臨んだ試合ではビルドアップ時に3センターバックの立ち位置が横に開きすぎることで、パスコースが無くなるケースもちらほら。この最たる例が、最終スコア1-2で敗れた第17節ガンバ大阪戦の1失点目(前半29分)の場面だ。

湘南GKソン・ボムグンがペナルティエリアでボールを保持したこの場面では、3センターバックの左右を務めたDF大野和成とMF鈴木雄斗が、タッチライン際へ開きすぎてしまっている。ゆえに自陣後方タッチライン際に立った右センターバックの鈴木雄斗が、G大阪のFWウェルトン(左サイドハーフ)に捕捉されてしまった。

これに加え、3センターバック中央を務めたMF鈴木淳之介と左センターバック大野の距離も開きすぎたため、ボールを失った直後の守備がしにくい状態に。GKソンの縦パスをG大阪MF鈴木徳真にカットされたうえ、同クラブFW山下諒也にラストパスを繰り出されると、これを受けたFW宇佐美貴史への鈴木淳之介の寄せが間に合わず。最終的には宇佐美に先制ゴールを奪われた。

鈴木雄斗 写真:Getty Images

直近の試合で差し込んだ光明

[3-1-4-2]の初期配置からビルドアップするのであれば、3センターバックが極力ペナルティエリアの横幅から出ない立ち位置をとり、外側と内側(左右)どちらにもパスを出せる状況を作るのが望ましい。このセオリーを概ね実践できていた第18節名古屋グランパス戦の後半、及び第19節FC東京戦では湘南のビルドアップが安定。ウイングバックも安易に自陣後方へ降りなくなったため、直近のリーグ戦では相手のハイプレスの餌食となる場面も減ってきている。整いつつある攻撃配置を継続できるか。そして先述の通り、攻撃の初手となるロングパスの送り先を相手サイドバック(ウイングバック)の背後に徹底できるか。この2点こそ湘南がシーズン後半戦に向け解決すべき課題であり、J1残留の成否を左右するポイントと言えるだろう。