南アメリカ大陸に全長2000km以上わたって流れるオリノコ川周辺には、ヘビや人間が描かれた「巨大な岩絵」が複数存在しています。
それらの所在はコロンビアとベネズエラの地元住民に口伝で知られているだけあり、その描かれた意味については数世紀にわたって謎に包まれていました。
しかし最近、イギリスのボーンマス大学(Bournemouth University)に所属する考古学者フィリップ・リリス氏ら研究チームは、カメラ撮影とドローン映像によって、点在する13カ所の遺跡にある岩絵の完全な地図を作成し、「これらの彫刻は古代の領土の境界を示していた可能性が高い」と報告しました。
この古代の岩絵は、現代で言う県境の道路標識のように機能していたのかもしれません。
研究の詳細は、2024年6月4日付の学術誌『Antiquity』に掲載されました。
オリノコ川周辺に点在する岩絵の謎
オリノコ川は、南アメリカ北部のベネズエラの大部分とコロンビア東部を流域とする巨大な川であり、全長2000km以上、流域面積94km2以上です。
その水量は世界で三番目に多いと言われています。
このオリノコ川が人々から注目されているのは、その大きさだけではありません。
この川の周辺には、謎に包まれた古代の岩絵が複数点在しているのです。
これらの所在は、地元の住民に口伝で伝えられてきただけですが、西暦18世紀には、オリノコ川を渡っていた探検家が、岩山の頂上にヘビの岩絵が存在すると報告しました。
そして後の研究により、様々な岩絵の存在が明らかになってきました。
例えば、最大の彫刻は約40m以上にもなり、4mを越える彫刻も10カ所以上存在しています。
彫刻のほとんどはヘビを描いたものでしたが、ヘビ以外にも人間、ムカデ、ワニ、その他の動物、幾何学的な模様なども登場します。
そしてヘビの岩絵は常に川に面しており、丘の頂上や川などからよく見える位置にありました。
しかし長年、これらの岩絵がなぜ存在するのか、どのような意味を持つのか分かっていませんでした。
今回、リリス氏ら研究チームは、これらを解明するため、カメラやドローンを用いて、巨大な岩絵が存在する遺跡13カ所の地図を作成しました。