誰でも「過去の自分」になら教えられる
私自身が有料のセミナーをはじめて開催したのは2016年7月でした。このセミナーはタスク管理の達人である大橋悦夫さんにお誘いいただいたことがきっかけでした。
そうして実現したコラボセミナー(共催)だったわけですが、実はお誘いを受けたのは2015年8月。実際にセミナーをする約1年程前でした。その時私は「育児が忙しくてなかなか時間がとれない」と一度断っているのです。
今からふりかえると、これは完全に言い訳でした(笑)。本音は「まだその資格が自分にない」と思っていたのです。冷静に考えれば大橋さんは私に資格がある、そう考えてくださったから誘ってくれたはずです。でも当時の私はそれを受け取れませんでした。
さまざまな偶然の要素もあり、結果的に約1年後にセミナーを開催することができました。しかしそうした偶然の要素がなければ、「自分には資格がない」と思い続けて未だにセミナーを開催できていないかもしれません。その場合はこの本を書く機会もなかったでしょう。そう思うとゾッとします。
私がこの話でお伝えしたいことは「資格があるかどうかを決めるのはあくまで他人である」ということです。自分にとっては「人に教えるレベルではない」と思えたとしても、他人から「教えてほしい」と言われるレベルに達しているということは十分ありえます。
その道のプロでなくてもセミナーは開催できるたとえば私は全く料理ができませんが、私のような人間でも簡単に料理ができる方法を教えてくれるセミナーがあったら受けてみたい。そう感じます。このような場合、皆さんは次のどちらのセミナーを受講したいと思いますか?
ミシュランレストランのシェフAが教える本格フレンチ料理の作り方 単身赴任歴10年の男性Bが教える手軽に作れて栄養満点のひとり飯の作り方この場合、少なくとも私は2.を選びます。なぜなら私は別においしいフレンチ料理が作れるようになりたいと、今の時点で思っていないからです。今の私が知りたいのは料理経験がゼロでも簡単に作れる栄養満点な食事を作る方法なのです。
もちろん講師の実績があるに越したことはありません。でもこのように、自分が知りたい情報とセミナーのテーマがずれていれば、どんなに講師の実績が素晴らしくても話を聞きたいとは思わないわけです。
このように、セミナーで大切なのはあくまで受講者が知りたい情報を届けることで、実は資格や実績はあまり関係ないのです。
たとえばあなたがマンガを描くのが趣味で、今までずっと描いてきたのであれば、自分なりに学んだこと、コツをつかんだこともたくさんあるはずです。そうしたノウハウについて、過去の自分であればめちゃくちゃ聞きたくなるとは思いませんか?
そうです。過去の自分のような人を対象にセミナーを開こうと思えば、誰でもセミナーはすぐに開けるのです。自分が興味をもっているジャンルをセミナーのテーマにしましょう。そう私が提案する理由はここにあります。今すぐはじめられるからです。
楽しく学べなければ講師業も続かない興味をもっているジャンルをセミナーのテーマにすべきもう一つの理由。それは、興味をもっていれば苦なく学び続けていくことができるからです。
たとえば私の場合、仕事術に関する本を読む時はマンガを読むように楽しんで読むことができます。同じように仕事術をテーマにしたYouTubeの動画も娯楽感覚で見ることができます。自分が興味があることなので苦なく、むしろ楽しんでインプットすることができるのです。
一方でたとえば私が「今流行っているから」という理由だけでChatGPTをテーマにセミナーを開こうと思ったとしましょう。そのためにインプットをしようと思えば、同じようにはいきません。
ChatGPT ももちろん多少の興味はあります。しかし、やはりセミナーを開くためにわざわざ時間を作って学ばなきゃという感覚になると、楽しくありません。仕事術を学ぶ時と比べれば意欲も低いので、学習効率も随分と違ってくるはずです。
少なくとも一つのジャンルでセミナー講師をやり続けたいなら、皆さんは専門家として学び続ける必要があります。その時、学ぶこと自体が苦痛であれば楽しくありません。場合によっては学び続けられなくなります。そうなるとそのテーマでセミナーを続けることができなくなります。
一方、自分が好きなジャンルであれば、先ほども書いたように苦なく学び続けることができます。セミナー講師を続けられる可能性も高まるのです。私がセミナー講師をはじめてから7年以上経ちました。これまで学び続けセミナー講師を続けてこれたのも、自分が好きなジャンルだったからこそです。
好きなジャンルだからこそ苦なく学べ、長い期間をかけて探求することができたのです。
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滝川 徹(時短コンサルタント) 1982年東京生まれ。Yahoo!ニュース・アゴラで執筆記事が多数掲載される現役会社員・時短コンサルタント。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけにタスク管理を習得。2014年に組織の残業を削減した取り組みで全国表彰。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。時間管理をテーマに2018年に順天堂大学で講演を行うなど、セミナー講師としても活動。受講者は延べ1,000名以上。月4時間だけ働くスタイルで4年間で500万円の収入を得る。著書に『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング)』『ちょっとしたスキルがお金に変わる「副業講師」で月10万円無理なく稼ぐ方法(日本実業出版社)』他。
編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年6月10日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。