接種回数によって、ワクチン接種からの観察期間が異なるので、死亡率は人年法で算出されている。ワクチン接種歴は、未接種、1回接種、2回接種、3回接種、4回接種、全ての接種(Ever vaccinated)に分類するほか、1回、3回、4回接種は、接種から21日未満か21日以上の2群に、2回接種については、21日未満か、21日から6ヶ月未満か、6ヶ月以上の3群に分けている。
ファクトチェッカーは、未接種群はワクチン接種群と比較して、全期間を通して、全死亡率が高いとして、ワクチン接種が超過死亡の引き金であることを否定している。以下がその文章である。
What the ONS found was that in all months from April 2021 to May 2023, the rate from all cause was higher in the unvaccinated than in people who had been vaccinated at least once.
そこで、図1に、2021年10月から2023年5月までの全死亡率をワクチン接種回数別に示した。1回接種群と2〜4回接種群のうち接種から21日未満の死亡数、加えて2回接種群のうち21日から6ヶ月未満の死亡数は少数であったので、図示していない。
全死亡率は、全期間を通して2回接種群は未接種群よりも高かった。また、2022年の5月以降は、3回、4回接種群も未接種群よりも全死亡率が高かった。ところが、不思議なことにEver vaccinated群の死亡率は、常に未接種群よりも低く、この結果をもってファクトチェッカーは、未接種群はワクチン接種群と比較して全死亡率が高いとしているようである。
表1の数字を確認すると、Ever vaccinated群の死亡数、人年は1〜4回接種群の死亡数、人年を合計した数字である。例えば、2022年7月における1〜4回接種群の年齢調整死亡率は、1172.5〜2377.3に分布するが、Ever vaccinated群の年齢調整死亡率は991.6である。ちなみに、未接種群の年齢調整死亡率は1342.4であった。
複数のファクトチェッカーが超過死亡におけるワクチン接種を否定する根拠として、ONSのデータを挙げているだけに、表1や図1の解釈は重要である。
日本の超過死亡は、欧米とは異なり2020年にはみられなかったのが、2021年、2022年、さらに2023年と漸増しているだけに、より事態は深刻である。英国のように、わが国におけるワクチン接種歴と全死亡率のデータが開示されれば、超過死亡と、ワクチン接種との関連を紐解く手掛かりになると思われる。
京都大の福島名誉教授が、コロナワクチンの重症化および死亡予防効果のデータ開示請求を国に対して行ったが、却下されている(図2)。その重要性に鑑みて、改めてデータの開示を求めたい。