少女像の碑文には、第2次世界大戦当時に日本軍がアジア太平洋全域で女性を「性奴隷」として強制連行した。このような戦争犯罪の再発を防ぐためにキャンペーンを繰り広げる生存者たちの勇気に敬意を表すると書かれている。また、慰安婦被害者を支援する韓国市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)が寄贈したとも記されている。
ミッテ区当局の撤去要請を受けた在独の韓国ロビーは即反撃を開始した。韓国側は行政裁判所に少女像撤去差し止めを申請した。ミッテ区側は2020年10月13日、同裁判所の決定まで撤去を延長すると伝達していたが、同年12月1日、区内に設置された従軍慰安婦の「少女像」を1年間、設置し、その間に恒常的な解決策を模索する決議を賛成24票、反対5票で可決。その後、ベルリンの少女像は今日まで撤廃されることなく、撤去要請は今日まで延期されてきた。
ちなみに、ドイツは東西分断の歴史を体験してきたこともあって、南北韓半島の分断国家のひとつ、韓国に対してもシンパが多い。日韓両国間で問題が生じた場合、ドイツは韓国側の主張に理解を示すことが多かった。一方、韓国でも「戦争後の処理問題でドイツは模範的な国だ」と称え、日本側に対して常に「ドイツに見習え」と主張してきた経緯がある。また、韓国の軍事政権下で反体制派活動家がドイツに亡命するケースが多く、ドイツには親北派の韓国反体制派の拠点が構築されている(「韓国人はドイツ人を全く知らない」2014年12月3日参考)。
興味深い点は、韓国の市民団体「慰安婦詐欺清算連帯」のメンバー4人が2022年6月26日、ドイツ・ベルリン市内の旧日本軍の慰安婦被害者を象徴する「平和の少女像」の前で、「慰安婦詐欺はもうやめろ」と書かれたプラカードを持って少女像の撤去を求め、「ベルリンの少女像は韓国の恥を世界に広げるだけだ」と主張している。
参考までに、「反日種族主義」(文芸春秋発行)の編著の一人、李栄薫氏は「日本軍が韓国の若い女性を強制的に拉致し、日本軍兵士の慰安婦としたり、慰安婦は日本軍の性奴隷だったといった報道は本来あり得ないことだ。日本軍は1937年に初めて慰安所を設置したが、既にあった慰安所を軍が管理し、女性の衛生問題から性病対策のために厳格な管理をした。慰安婦には通常の公娼と同じように手当も休日もあった」、「興味深い点は、韓国軍慰安婦や米軍慰安婦問題は韓国民の関心を呼び起こさないが、1936年から1945年までの日本軍慰安婦には大きな関心と国民の怒りが沸き起こってくる。ぎこちない不均衡は『反日種族主義』という集団情緒が働くからだ」と喝破している(「『日本軍慰安婦』+『集団情緒』=反日?」2020年1月6日参考)。
ベルリンの「平和の少女像」が撤去される方向に向かっている一方、韓国聯合ニュースによると、正義連は19日、イタリア・サルデーニャ島のスティンティーノ市で22日午後7時(日本時間)に少女像の除幕式を行うと発表した。正義連によると、この少女像は欧州ではドイツ・ベルリンに次いで2番目に公共の場所に設置される。少女像の碑文はベルリンのそれと全く同文だ。
なお、聯合ニュースによると、「平和の少女像」は2011年12月、ソウルの日本大使館前に初めて建てられたのを皮切りに、現在は韓国に148、海外に31の記念碑・平和碑が設置されている。
日本との友好関係を模索する尹錫悦政権が発足して以来、文在寅前政権下で暗躍してきた反日活動家は「平和の少女像」の海外設置を進めることで日本の国際的評価を貶め、同時に尹錫悦政権に揺さぶりをかけている。彼らは「平和の少女像」という名称で‘憎悪’を世界に拡散しているのだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年6月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。