結論と今後の見通し

こう考えるとCOP29ではNCQGに合意できない可能性が十分ある。上述のようにNCQGは2025年に提出される途上国のNDCの野心レベル引き上げを可能にするとのとの位置づけであったため、途上国側がNCQG合意失敗を理由に、国別目標見直しの野心レベルを下げ、その責めを先進国に帰することは確実であろう。

6月の欧州議会選挙では温暖化対策に懐疑的な右派、極右政党が大きく議席を伸ばした。域内で問題山積の中で途上国支援を大幅に拡大することはますます難しくなるだろう。仮に11月の米大統領選でトランプ政権が復活すれば、米国は気候資金を一切出さなくなる。途上国が期待するような資金フローがなされる可能性は限りなく低い。

筆者は本コラムにおいて繰り返し「1.5℃目標は死んだも同然」と述べてきた。

COP28の結果と評価 グローバルストックテイクをめぐる同床異夢 1.5℃目標の死:現在の気候政策は行き詰まりを見せている

COP29ではそれがますます明らかになるだろう。1.5℃目標を所与の前提とした日本のエネルギー温暖化政策についてもこうした現実を踏まえたものであるべきだ。