国民党のカロリン・エットシュタドラー憲法担当相は「環境相は連邦州の意見に法的に拘束されており、農業省との合意を図らなければならないとされている連邦省庁法にも従わなければならない。憲法や法律を無視すれば、当然法的な結果を招くことになる。環境相は意図的に憲法および法律違反を犯している。これは極めて無責任であり、異常だ」と述べ、「事案の内容に関わらず、法が法であり続けなければならない。イデオロギーが法を上回ることは決してあってはならない」と強調している。
ネハンマー首相は17日、環境相の独走を批判し、職務乱用で訴える一方、「緑の党」との連立を解消する考えはないことを明らかにしている。政権の任期があと3カ月あまりしかないこと、夏季休暇に入る前に議会で採択すべき50余りの法案が控えていることもあって、早期議会解散は出来ないという事情がある。ちなみに、それらの法案は主に国民党が提出したものであり、党としては早期採択したい法案だ。
多分、ゲヴェスラー環境相は環境相の立場にあるこの時、「自然再生法」をぜひとも採択したいという願いがあったはずだ。その上、ネハンマー首相が連立を解消できないことを理解していたはずだ。環境保護グループ「グローバル2000」の指導者でもあった環境相はこれまでも「緑の党」の中でも冷静で切れ者と見られてきた。特に、欧州議会選挙で「緑の党」の筆頭候補者の不祥事もあって、支持率を大きく落としただけに、「自然再生法」を採択し、環境保護政党として実績を有権者にアピールできるというわけだ。
なお、「自然再生法」では国民の80%以上が支持しているだけに、国民党も法案への批判を控え、ゲヴェスラー環境相の一方的な独断への批判に留めている。
一方、支持率でトップを走る自由党は「緑の党」の環境相を批判し、議会で不信任案を提出する意向だが、社会民主党、リベラル政党「ネオス」は「自然再生法」を支持していることもあって、環境相の独走を問題視、法的に訴えることは「わが国の評判を落とすだけだ」と主張している。
総選挙まであと3カ月余りだ。ゲヴェスラー環境相の独走問題で議会内が再び賑やかになり、オーストリア総選挙の行方が俄かに面白くなってきた。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年6月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。