G7プーリア・サミットでメローニ伊首相の出迎えを受ける岸田首相首相官邸HPより

顧問・麗澤大学特別教授 古森 義久

イタリアで開かれた今回のG7サミット(主要7ヵ国首脳会議)では、議長役のイタリアのジョルジャ・メロー二首相が活躍した。世界の主要な民主主義諸国の首脳の集いを国際的な女性リーダーとしてみごとに仕切ったわけだ。

だが日本の主要メディアはこのメロー二氏に一貫して「極右」というレッテルを貼ってきた。極端で過激で非民主的なイメージを持つこの表現には特定の政治偏見がにじむ。

同じ「極右」という用語はフランスの有力政治家のマリーヌ・ルペン氏やアルゼンチンの大統領になったハビエル・ミレイ氏にも貼り付けられてきた。国民多数が自由で民主的な選挙で支持した指導者がなぜ「極」なのか。その用語を使う側こそ極端な政治的立場をとっているのではないか。

日本の新聞やテレビなど主要メディアのニュース報道で「極右」という用語が頻繁に使われるようになったのは今回は欧州連合(EU)の議会選挙が契機だった。

欧州の合計27ヵ国が加盟するEUは国家同士の境界を低くする国際組織で、その全体方針を決める欧州議会の議員を5年に1度、各国内で選出する。全議席は720、その配分は各国の人口に合わせ、最多がドイツの96議席、最少はキプロスなどの6議席とされる。今回のこの選挙は各国で6月上旬に実施され、その結果、保守とされる政党が多くの国で議席を画期的に伸ばしたのだった。

この場合の「保守」を、日本の主要メディアや欧州のリベラル系メディアは「極右」と呼ぶのである。

その種の「保守」の政策とはEU本部の加盟各国に対する権限の肥大への反対、移民の大幅な流入への反対、各国の主権や独自の文化、歴史、言語の重視などが特徴である。これらがなぜかテロ組織をも連想させる「極右」という否定的なレッテルを貼られるのだ。

今回の欧州議会選挙ではまずドイツでは「ドイツのための選択肢(AfD)」がショルツ首相が率いる与党を破り、第二党となった。フランスではルペン氏が代表する「国民連合」がマクロン大統領の率いる与党連合を大差で破り、同大統領を国民議会の解散へと追いこんだ。イタリアでもメロー二首相が率いる「欧州保守改革(ECR)」が議席を大きく伸ばした。