国連総会では、2022年3月、23年2月と、ロシアの侵略を非難する決議に、141カ国が賛同した。しかし24年の同時期には、同じような決議案が提出されなかった。ウクライナとその支援国が、提出を見送ったからだ。賛同国の数が、大幅に減ることが必至の情勢であった。賛成国の数が141カ国から大幅に減るようであれば、ウクライナにとっては大きな痛手となる。万が一、過半数をとれないようなことにでもなったら、大変な事態となってしまう。

そこで開催された「平和サミット」は、国連総会から離れて、多数の諸国がウクライナを指示していることを見せるための場であったと言ってよい。国連加盟国数は193なので、過半数は97である。結果として、最終共同宣言に調印したのが77カ国だったことを考えると、同じ内容の決議文が、国連総会で採択されるかは不明だ、ということになる。この数では、そもそも今後、ウクライナとその支援国の主導で決議文が提出された際、国連加盟国の過半数の賛成をもって、国連総会がそれを採択するかどうかも、不明だと言わざるを得ない。

「平和サミット」のようす ゼレンスキー大統領Fbより

「平和サミット」の第2回目が、数か月内に開かれる見込みだという。ロシアの「行動計画」なるものを作成し、それをロシアに提示するのだという。おそらくは欧州全域の諸国と、欧米諸国の同盟国あるいは友好国は、その試みに賛同することになるのだろう。だが77カ国よりも賛成国を増やせる見込みは乏しいように思われる。

不参加の諸国の多くが、ロシアが不在であることに不満を表明していた。参加国の中ですら、同じ不満を表明したサウジアラビアのような国があった。参加しながら共同宣言に署名をしなかったアルメニア、ブラジル、メキシコ、インド、インドネシア、サウジアラビア、南アフリカ、タイ、UAEなどの有力な諸国は、いずれも同じような立場をとっていると考えてよいだろう。これらの諸国は「交渉の不在」に不満を持っている。

もっとも80カ国の代表が見守る大会議場で、ウクライナとロシアが停戦合意に向けた交渉を行う、というのは、想像できない。結局、「平和サミット」の意味が問い直されることになるだろう。

「平和サミット」のようす ゼレンスキー大統領Fbより

アメリカでは、トランプ大統領が再選される可能性が高い。そうなると欧米諸国によるウクライナへの大規模な支援の構図が大きく変わる可能性が高い。そもそもそれを見越して、昨年の「反転攻勢」が、準備不足の中でも決行されたはずだ。大統領選の前に戦果を挙げておく必要があった。もはや11月のアメリカ大統領選挙まで残された時間は短い。

ウクライナが、戦場の膠着状態を、多国間外交で打開したい、という気持ちを持つのは、当然ではある。だが今のところ、それは会議のための会議以上の意味を作り出せていないように見える。