昔、アパレル業界で2-3年先の流行を決める業界トップの戦略というのをどこかで読んだことがあります。例えば再来年の服飾の流行の色はこれで、デザインはこんな感じで、というのを業界トップがある程度の指針を決めるというものです。それを受けて業界は準備を行い、メディアにはいかにも「この秋の装い、コーデはこれで決まり!」という具合に押し込むのです。
すると流行に敏感と称するアーリーアダプターたちが我先にそれに飛びつき、フォロワーがそれに群がる、という流れを作ります。完全な出来レースなのですが、そうやることで業界全体の効率化を進め、護送船団のような形にすれば普段はライバル同士でも10年20年とお互いに生き延びることができるわけです。
電気自動車がなぜ生まれたのでしょうか?私のざっくりした理解は日本勢のハイブリッド車製造は欧米では当時なかなかハードルが高い車だった。その中で、ディーゼル車を推す欧州が最も気にしている環境規制を裏切る事件がフォルクスワーゲン社で発覚、世界が揺れました。それを受け、世界は電気自動車を次世代の戦略車とするのです。なぜなら部品数は少なく、環境にも優しそうで、かつハイブリッド車のような複雑な仕組みでもないので宿敵日本車を打ち破るには最適であると。
この戦略はインフラ整備も含めトレンドチェンジが進み、成功しそうでした。が、ここにきて売れ行きが落ち、ハイブリッド車に揺り戻しが起きてしまいました。これが長期的なトレンドか、一時的なものかはもう少し様子を見る必要があります。私の予想はEV化はそれでも進むがペースが大きくダウンするだろうとみています。世の中は計算通りにはいかないわけです。
トランプ氏が大統領になればこれは更に後退するでしょう。ただ、最終的には消費者がどう感じるかなのです。冒頭のアパレルの話でも流行だけを追うアーリーアダプター層は商品の本質よりも流行の先端を走りたいという人達の影響力です。しかも地方政治家、自治体や一部のステークホールダーがそれに便乗するのです。ところが、フォロワーには必ず脱落者も出るのです。「あぁ、これは違う」と気がつくわけです。EVはまさにそのステージにあり、なにか新しい切り口が出るまでは爆発的販売力はでず、ステディな成長に留まるのでしょう。