B2B市場への進出により更なる高みへーGroCart買収

2023年6月には、InstashopはB2BオペレーターであるGroCartを買収し(買収価格非公開)、卸売部門への進出を果たしている。GroCartは、200以上の主要サプライヤーと提携し、5000以上もの商品を提供する企業だ。この買収により、Instashopは小売顧客の獲得だけでなく、レストランやホテルなどのビジネス顧客にもサービスを拡大した。GroCartと自社の既存のインフラを統合することで、より効率的なB2Bソリューションも実現している。

B2B市場への進出は、安定した収益源を確保し、ビジネスの持続可能性を高める重要なステップである。この戦略的な拡大により、Instashopは市場シェアを拡大し、さらに多様な顧客基盤を持つことができた。

なお、Instashopは2020年にはドイツのDelivery Heroへ3億6000万米ドルで売却されている。InstashopはDelivery Heroの広範なネットワークやインフラを利用し新市場に参入できるようになり、配達効率やサービス品質の向上にも繋がった。このように、変化を恐れず短いスパンで柔軟に会社の形を変え成長していくスタイルも、同社の急成長に貢献していると言えよう。

中東の食料品配達市場を変革した創業者のチャレンジャー精神

Instashopの共同設立者は、ともにギリシャ出身であるJohn Tsioris氏とIoanna Angelidaki氏。

John Tsioris氏は、ギリシャのクレタ工科大学で生産工学を学び、オランダのロッテルダム経営大学院で総合経営学を修了。Philipsの中東及びトルコ地域管轄マーケティングインテリジェンス部門を設立しマネージャーを務め、同社在籍中から音声ソーシャルネットワークサービスを展開するVoundを創設した。

PhillipsおよびVoundから離れた後、Instashopを立ち上げCEOに就任したが、2023年11月にはこの座を退き、 COOであったNikola Cabarkapa氏に引き継いだ。 なお、その後John Tsioris氏はテクノロジー企業Revotechを創設してCEOに就任している。

また、Ioanna Angelidaki氏は、InstashopだけでなくVoundの共同設立者でもあった。InstashopではCMO(最高マーケティング責任者)としてスタートアップ文化と電子商取引の波に乗り、同社の成功を支え続けた。InstaShopがMENA地域の主要オンラインマーケットプレイスへ大きく成長できたのは、彼女のマーケティング戦略とビジョンあってこそ。 同氏も2024年2月にInstashopのCMOより退任し、現在は新たな道に向かって進もうとしている。

食料品配達市場がさらなる拡大を見せるなか、競合は一層激化することが予想される。Instashopはその革新性によって王座の地位を保ち、さらなる新境地を開拓できるだろうか。同社の未来に益々期待が高まる。

英国在住。元総合商社勤務、現在は在宅フリーランスとしてWebライター・業務支援などに携わる。