人には得手不得手があるものですから、車の運転についても得意な人と苦手な人がいると思われます。しかし「上手い運転がどういうものか」については、なかなか明確な答えを出すのが難しいものでしょう。
それでは、さまざまなドライバーを世に送り出す教習所の指導員は「上手い運転」をどのように考えているのでしょうか。今回は指導員を務める方々に、「教習生を教えていて運転のセンスを感じるポイント」について話を聞きました。
目次
操作の上手さは「アレ」でわかる
大事なのは技術よりも精神面?
操作の上手さは「アレ」でわかる
運転が上手いというと、まず思い浮かぶのが「運転操作の正確さ」というポイントかもしれません。今回のインタビューでも、「運転の上手さ=車両を適切に動かせること」という意見が聞かれました。
「感覚の差が出やすいのはやっぱりS字・クランクですよね。多くの教習生は車両感覚が掴めていませんから、視界に入る前方だけを過剰に気にしてしまい、脱輪したりするんですけど。
たまにそういう感覚が優れている教習生がいると、やっぱり『おっ』と思います。後輪のタイヤの動きを感覚的に捉えて、何も教えなくてもベストなライン取りで曲がっていくので、違いがわかりやすいですね。
もちろん車両感覚は慣れとともに身についていくものですから、最初はできなくても全然問題はないですが、『もともとのセンス』という点ではそういうところに表われやすいのかなと思います」(関東エリア教習所指導員、指導歴7年)
車両感覚は空間把握の能力と密接に関わっていると考えられ、やはり個人差の表われやすいポイントなのかもしれません。経験によって十分に補える能力ではありますが、「最初から感覚を掴むのが得意な人」もいるようですね。
大事なのは技術よりも精神面?
インタビューを進めるなかで、「操作の正確さ」よりも多く挙げられていたのが「精神的な面での運転適性」というポイントです。他者の命を奪うこともある自動車を扱うにあたって、責任ある振る舞いができるドライバーを「上手い」と考える指導員も少なくありませんでした。
「教える側の立場もあると思いますが、こちらの指摘をすぐにフィードバックできる教習生は運転適性も高い傾向にあるように思いますね。技術面というより、精神的な面で適性があるといか。
反対に、技術的なレベルが高くても、自分のなかで『こうでなきゃいけない』というのが強すぎると、公道を走るうえでは危うさがあるように思います。公道にはさまざまな交通主体が走っていて、それぞれ見えているものが違いますから、安全運転のためには『相手の目線』を考えられることが何より大切です。
そういう意味で、自分とは違う人の指摘や意見に耳を傾けられる人は、ドライバーとしての適正が高いように思います」(都内教習所指導員、指導歴11年)
たしかに公道を走るうえでは、「自分の目線」だけではなく「相手がどう動こうとしているか」にまで気を配ることが大切です。相手の立場に立つという意味で、「人の話を素直に聞ける心」は安全運転にも通じるところがあるのかもしれませんね。