歴史は動いている。歴史の動く音を体感できる人もいるかもしれない。ただ、歴史は静かに動き、「あれは歴史的出来事だった」と後で気が付く場合が多い。パリサイ人がイエスに「神の国はいつ来るのか」と尋ねると、イエスは「ここにある、あそこにあるといえるものではない」と答え、人の子も同じように、誰も気が付かない時に現れるというのだ。

オーストリアのローマ・カトリック教会のシンボル、シュテファン大聖堂(2022年4月、撮影)

前口上が長くなった。当方は先日、「歴史が動いている」と感じたニュースがあった。それは新聞一面トップを飾るような大ニュースではなく、国際面の短信記事だったが、「ああ、歴史が確実に動いている」と感じたのだ。

そのニュースを紹介する。ウィーンの公立学校でイスラム教徒の家庭で生れた生徒がローマ・カトリック教教会の信者の親から生まれた生徒の数をとうとう上回ったのだ。イスラム教徒を親とする家庭の生徒数は全体の35%を占め、それを追って26%は無宗派の親からの子供、そしてローマ・カトリック系は21%に留まった。そのほか、正教徒系からの生徒13%、プロテスタント系2%だ。ウィーン市が調査した最新調査結果だ。ウィーン市内の90%の小学生を対象にして調査された。なお、私立学校は調査対象外だ。

ちなみに、2017年に実施された同様の調査では、カトリック系生徒が31%で第1位、イスラム系は28%だった。7年後、イスラム系とカトリック系生徒の割合が逆転し、イスラム系生徒が最大グループとなったわけだ。公立の学校ではスカーフを着けた女子生徒はもはや珍しくない、というより、スカーフを直用していないオーストリアの生徒は年々少なくなっているのだ。

調査を実施した関係者によると、「イスラム教徒を親とする生徒は非常に宗教的で、性的少数派(LGBT)に対しては批判的であり、多くは反ユダヤ主義的傾向がある。イスラム系子供でも信仰に余り関心がない場合、他の典型的なイスラム系生徒から様々な圧力を受ける傾向がある」という。