挨拶で忠誠心まで疑われる
これはある会社のケースになる。鈴木さんは、キング商事に勤務する入社5年目の社員である。現在の役職は営業部所属の係長。昨年の4月に係長に昇進したがスピードは社内でも平均的だった。その年の冬に、同期から課長が誕生した。彼は社内でも将来を嘱望されていた人物だったので焦りはなかった。
翌年、鈴木さんの後輩から課長が誕生した。鈴木さんは係長のままだった。翌年、さらに1年下の課長が3名誕生した。さすがに、鈴木さんは焦った。鈴木さんは営業部内でもそれなりの成績を上げていたので理由がわからなかった。
鈴木さんは、ストレスに苛まされてとうとう休職してしまった。そんなとき、人事部にいる同期が会いに来てくれた。彼に打ち明けたら次のように言われた。
「営業本部長や人事部長に評判がよくなかったみたいだ」と指摘された。さらに「 挨拶もしないって言われていたよ」。
鈴木さんはショックのあまり卒倒した。
鈴木さんは係長になった頃から、挨拶は部下からされるものと勘違いしていた。大したことはないと思っていたが、上司の怒りを買っていた。だから昇進できなかった。
挨拶が与える影響について覚えておきたい。世界的に有名な飲料メーカーがある。荷物の配送前に、ドライバーが集合する。その際、挨拶ができない者は当日のシフトから外される。「挨拶ができないくらい体調が悪いのだから働かせられない」という理由である。
仕事で成果をあげるにはそれなりの努力が必要とされる。テクニカル要素や相応の運にも恵まれなければいけないだろう。しかし、挨拶なら今日から実行できるはずである。
すぐに出来ることは改めたいもの。油断大敵であるとも申し上げておきたい。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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