心踊るドライブフィール。快適、スムーズ、そしてなかなか速い
11代目アコードを公道でドライブした。新型は「相棒アコードとより高みへ」をテーマに開発された4ドアサルーン。伝統の「人と時代に調和したクルマ」という思想を継承しながら、最新技術を積極投入している。日本仕様は2リッターエンジン(147ps)と2モーター(184ps)を組み合わせたe:HEV。すでにクローズドコースでプロトタイプに触れ好感触を得ていたが、その思いがさらに強まったことを最初にお伝えしておきたい。
箱根周辺の一般道~ワインディングロードを走ってまず気づいたのは、エンジンの存在をあまり感じないこと。前回、クローズドコースで試乗した際には、アクセル開度の大きい比率が高かったせいか、エンジンが頻繁にかかることが少々気になった。だがリアルワールドを走ると始動する頻度が圧倒的に少ない。しかも、エンジンがかかっても気にならない。アクティブノイズコントロールを含め、入念な静粛性対策もプラスをもたらしている。
新型はリニアなアクセルレスポンスが印象的である。従来型で見受けられたCVTのようなラバーバンドフィールは影を潜めた。ダイレクト感があり、上り勾配が続いてもしっかり力強く駆け上がっていく。アクセル操作と加速感、エンジンサウンドの高まりがキレイにシンクロしているので、実に気持ちいい。
e:HEVは積極改良されてよくなってきたが、直噴化した2リッターアトキンソンサイクルエンジンに2モーターを組み合わせ、エンジンとバッテリーの使い方を洗練させたアコードのシステムは、完成度という点でひとつの節目になるように思う。
ハンドリングはスポーツセダン感覚。快適キャビンはショーファードリブンに対応
アコードでワインディング路を走るのは楽しい。下り坂では勾配に合わせて減速セレクターを使うと走りやすかった。減速度の最大値が従来と比べて倍増したことと、6段階に細分化されたことで好みの減速度が選べるようになった。
ちょっと攻めて走りたいときには、減速度が固定となるようスポーツモードを選ぶか左パドルを長引きする。アクセルペダルの開度で減速度を自在にコントロールできるようになる。フットブレーキのフィーリングもリファインされた。回生ブレーキだけでなく電動ブレーキの制御がさらに洗練されたようで、ほぼ違和感がなくなっている。
シャシーの仕上がりも高水準。乗り心地もハンドリングも申し分ない。サスペンションはストローク感があり、足がよく動いて路面にしなやかに追従してくれる。タイヤがつねに安定して接地しているので、攻めぎみに走っても不安に感じることがない。
走行モードは3種。コンフォートモードを選択するとノーマルよりも当たりがマイルドになる。スポーツモードを選択すると若干引き締まり、ロールが抑えられ回頭性も高まる。だがスポーツでもしなやかさはそのまま。このあたりのさじ加減は絶妙だ。
ハンドリングはまさに意のままである。回頭性はほどよく俊敏で素直に正確に動いてくれる。修正舵はほとんど必要ない。大柄なクルマながら、すべて手に内で操れる感覚がある。スポーツセダンと呼びたいハンドリングである。
上級モデルらしく、キャビンの快適性もハイレベル。車内空間に余裕があり、前席はもちろん後席の居住性にも優れている。身長175㎝の乗員が後席に座っても足元は広々。頭上にも余裕がある。シックスライトウインドウのおかげで閉塞感はない。
助手席のポジションを調整するスイッチがシートサイドにも配されているので、運転席や後席からでも調整できて便利。リアドアの開口幅は広く乗り降りもしやすい。フラッグシップセダンとして後席を常用することを想定して作り込まれているようだ。
トランクは奥行きも横幅もかなり余裕があり、後席のシートバックを倒すと長尺物が積める。多彩なシーンに対応できそうだ。
先進運転支援装備やインフォテインメント系もさらに充実した。たとえばパーキングパイロットは、センターコンソールのスイッチを押してゆっくり前進すると駐車可能なスペースを検知する。設定してしまえば、あとはなにもしなくて大丈夫。狭い場所でも自動的に切り返しまでやってくれる。
車線変更支援は、可能な状況になるとインジケーターが表示され、ウインカーレバーを半押しすると支援操作を開始。途中で危険だと判断すると自動的に中止する。人間の操作よりも安全な気がした。
国内向けのホンダ車として初めてGoogleが搭載されたこともニュースといえる。音声対話機能をはじめ、便利で快適にさまざまな機能を駆使できるようになったのはありがたい。
アコードは、半日近く乗っても、まったく飽きなかった。クルマの完成度は素晴らしい。とはいえSUVが人気の現在、セダンは少数派。しかも新型は車両価格が約550万円と従来車より2割近くアップした。明確なーザー層が、いまひとつイメージできないのである。