自分の身を守ったあとは家族が心配
無事、地震や津波から自分の身を守れたが、もし自分が外出中に災害に遭ったら離れている家族の身が心配だ。「学校に行っている子どもは大丈夫だろうか」「家にいるはずの妻は」「離れて暮らしている両親は」など。そこで、家族や親の安否を確認するために、スマホで電話をする。
これは、誰もがとる行動だろう。そう、「誰も」がとるということは、何千人、何万人の人が同時に一斉に電話をかけるということになる。普段はかけると必ず相手につながるスマホだが、電波を使用して通話している。当然ながら通話に割り当てられている電波には限りがあるので、同じエリアにいる数千人もの人が一斉に電話をかけると、割り当て電波が飽和状態になってしまう。
そうなると、緊急性の高い通話もつながらなくなってしまうため、大きな災害時には通信事業者各社が音声通話を70%以上制限することがある。

なので、災害時に家族の安否を確認しようと電話をしても、つながらない状態になることが多いのだ。
では、固定電話なら大丈夫かというとスマホと同様だ。固定電話は交換機を通じて電話機同士をつないでいるが、交換機もつなげる回線数に限りがあるので、同時・一斉に電話が集中すると交換機がパンクして電話がつながらなくなる。
このことを踏まえると、災害時の安否確認に電話は役に立たなくなる可能性が高い。そこで、普段から家族同士で安否確認の方法を確認し合っておくことが重要になる。
電話以外で安否確認をする方法
災害時には電話による安否確認ができない可能性が高いというわけだが、これはあくまでも「通話」の話。スマホの基地局が生きていてインターネットにつなげられるのであれば、通信は可能。メールやSNSなど、インターネットを利用したコミュニケーションはできるということだ。
ということで、まずはLINEを使ってみることをおすすめする。日本では、スマホを持っている人であれば、ほぼ100%、LINEを使ったことがあるだろう。万が一の災害に備えて、家族だけのLINEグループを作っておけば、別々の場所で被災した時、そのグループに各自が無事でいることを投稿すれば、安否確認ができる。
ただし、日本人のほとんどがLINEを使っているということは災害時には一斉にLINEに投稿する、ということでもある。場合によっては、LINEのサーバーがパンクすることもあり得るということだ。それを考えると、バックアップ用の安否確認方法も用意しておきたい。
そこで、例えば「ココダヨ」というアプリ。

ココダヨは、緊急地震速報などに連動して、災害があった時、登録メンバー全員に位置情報を自動送信して、安否と居場所を同時に確認できるという防災アプリ。同アプリでグループ設定した人専用のグループチャットも用意されている。被災者やその家族が一斉にLINEにアクセスして、万が一、LINEのサーバーがパンクしてしまった時でも、ココダヨのグループチャットで連絡を取り合うことができるので安心だ。

ここまでは、スマホでインターネットにアクセスできた場合の安否確認の方法。では、基地局が停電や倒壊、浸水などで使えなくなっている場合はどうすればいいのか。そういった事態も想定した連絡方法を知っておくことも大事だ。
スマホもメールもSNSも使えなくなった時、最後の手段として頼りになるもの。それは「公衆電話」だ。

近頃、すっかり見かけなくなってしまった公衆電話だが、それもそのはず。08年頃まで30万台あった公衆電話は、19年に15万台と半減しているのだ。ただ、この公衆電話、実は災害にめっぽう強い。
大きな災害があると、スマホも固定電話も通話制限がかかるのだが、公衆電話は「災害時優先通信」の手段とされているため、スマホや固定電話がつながらない時でも優先的に発信できる。被災地から遠く離れて暮らしている両親や子どもがいる場合、公衆電話からその家族に電話で無事を伝えることができるのだ。
今やテレフォンカードは「絶滅危惧種」だろうが、もし引き出しのどこかに残っていたら、財布などに忍ばせておくといいだろう。そして、キャッシュレス全盛の時代とはいえ、10円玉と100円玉を緊急時の公衆電話用に持っておくことも安心につながる。

だが、被災地内の家族のスマホなどは通話制限がかかっているため公衆電話からでもつながらないだろう。そんな時に備えて覚えておきたい安否確認方法が、「災害用伝言ダイヤル」だ。

(NTT西日本のホームページより)、『BCN+R』より引用)
「伝言ダイヤル」と聞くと、ある年齢以上は懐かしく思うかもしれない。ケータイが普及する前、個人間でメッセージをやり取りする手段として80年代に登場したが、ケータイの普及とともに16年に廃止されたサービスだ。
しかし、災害時に有用な連絡手段となるため、災害用伝言ダイヤルとしてその仕組みが継続されている。災害用のため、普段は使えないので、いざという時のために練習しておくことができないが、接続すれば音声ガイダンスが流れるので使い方に迷うことはない。
なので、覚えておきたいのは「171」という電話番号だけだ。安否確認をするためのサービスだから「い・な・い」という語呂合わせで覚えておくといいだろう。
使い方だが、録音、または再生をするための個人確認として電話番号を使用する。自分が被災者で無事を連絡したい場合は、自分の電話番号を入力してメッセージを録音。遠くの家族がその安否を確認する場合は、被災地にいる家族の電話番号を入力してメッセージを再生する。
仕組み上、電話番号を知っている人であれば、誰でもメッセージを録音・再生できるので、家族に限らず、友人であっても安否確認ができるようになっている。もし、特定の人にしか聞かれたくないメッセージを残したい場合は暗証番号も設定できるので、個人情報を伝えたい時は暗証番号付きにすれば安心だ。