ところで、韓国側は国民に「汚物風船」を発見しても触ってはならないと警告を発している。なぜならば、汚物風船の中はこれまでゴミやプラスチック、動物の糞、紙くずだけで、「安全に関わる物質は見つからなかった」(韓国統一省)が、北側が韓国側の拡声器による宣伝工作に激怒して、生物・化学兵器、放射性ダーティ爆弾を挿入する危険性が排除できなくなってきたからだ。例えば、南の「対北拡声器」に対し北側が無人機で爆発する可能性も考えられる。
当方はこのコラム欄で、「今回の『汚物風船』の中は汚物だけだったが、生物兵器、化学兵器、放射性ダーティ爆弾が入っていたらそれこそ一大事だ。軍事用語でいう『戦略的曖昧さ』が北側の狙いではないか。ひょっとしたらダーティ爆弾ではないかと相手側に思わせることができれば、戦場での戦いを有利に展開出来るからだ」と書いた。北側は韓国国民を動揺させる心理作戦を展開しているわけだ(「『汚物風船』を巡る北の戦略的曖昧さ」2024年6月2日参考)。
南北間で緊張が高まっている中、ロシアのメディア情報によると、ロシアのプーチン大統領は今月中にも訪朝する予定だという。実現すれば、プーチン氏の訪朝は2000年以来だ。
ロシア軍が2022年2月、ウクライナに侵攻して以来、ロシアとウクライナの間で戦闘が続いているが、プーチン大統領は北朝鮮との関係を強化し、不足する兵器を補うために北朝鮮から砲弾などを手に入れていることは知られている。プーチン大統領は昨年9月、ロシア極東アムール州のボストーチヌイ宇宙基地で金正恩総書記と首脳会談を行っている。
プーチン氏は今回、北朝鮮から弾薬などの武器だけではなく、労働者の支援を要請するのではないかと見られている。ロシアではウクライナ戦争以来、国民経済は戦時体制を敷いているが、工場での労働者不足が深刻だからだ(「中国『金正恩氏のロシアへの傾斜』懸念」2024年3月26日参考)。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年6月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。