朝鮮半島の情勢がここにきて風雲急を告げてきた。戦いが始まれば、第2次朝鮮動乱の勃発となるが、砲弾が炸裂するといった戦闘ではなく、北朝鮮はごみ屑などを詰めた「汚物風船」を南に向かって飛ばす一方、韓国は北朝鮮の独裁政治を暴露した「対北拡声器宣伝」を展開している。ミサイルや砲弾を利用した戦いではないため、これまでのところ人的犠牲は出ていないが、本当の実弾による戦闘が勃発する危険性は排除できない。欧州メディアは南北間の「汚物風船」対「対北拡声器宣伝」といった一風変わった戦闘の行方を好奇心もあって大きく報道している。
韓国側は9日、北朝鮮の「汚物風船」に対抗するために「対北拡声器宣伝」を開始したが、韓国軍合同参謀本部は11日、北朝鮮軍の兵士が9日午後0時半ごろ(現地時間)に南北軍事境界線を一時侵犯し、韓国軍が警告放送と警告射撃を行ったことを発表したばかりだ。南北間で実弾による衝突が起きたことから、南北間で軍事エスカレートする危険性が出てきたと受け取られている。ちなみに、韓国軍合同参謀本部が11日報じたところによると、北朝鮮兵は直ちに境界線の北側へ戻ったという。
これまでの経過をまとめる。北朝鮮は先月28日から「汚物風船」を南に向かって飛ばした。韓国統一省は同月31日、「大量のごみや汚物がはいった風船が約260個、韓国領土に届いた」と発表、「今後も北から大量の風船が飛んでくる可能性がある」と警戒態勢を敷いていた。北側は今月2日、「これで風船を南に送るのは停止する」と一方的に‘休戦’宣言をしたが、韓国側が「対北拡声器宣伝」を開始したことを受け、8日に入ると「汚物風船」を再開した。韓国軍合同参謀本部によると、9日午前10時時点で330個が確認されたという。
ちなみに、北朝鮮の「汚物風船」に反発して、韓国の活動家たちはK-POPの録音、ドル紙幣、北朝鮮の指導者金正恩を批判するビラを風船に載せて北朝鮮に送っている。これらの活動は一部の北朝鮮難民によって設立されたグループによって行われ、韓国国内では物議を醸している面もある。
北朝鮮は過去、韓国民間団体のビラ散布、韓国軍の拡声器による北体制批判に対して神経質になってきた。韓国側の情報によると、拡声器は2018年4月の南北首脳による「板門店宣言」を受けて撤去されるまで最前線に固定式が24台、移動式は16台が設置されていた。今回も同数の拡声器が利用されているものと見られる。放送時間や場所などについては軍事作戦のため未公表だ。なお、大型拡声器(高出力スピーカー)の場合、20㌔から30㌔まで拡声器からの音量は届くという。韓国大統領府は9日、「拡声器を設置し、放送を開始する」と予告し、「両国間の緊張のエスカレーションの責任は全て北朝鮮にある」という趣旨の声明を出した。
それに先立ち、韓国側は2018年の北との間の軍事協定を停止すると発表した。同協定は朝鮮半島での緊張を緩和し、国境沿いでの意図しないエスカレーションを避けることを目的としていた。韓国は昨年、平壌が軍事偵察衛星を宇宙に送り込んだ後、部分的に軍事協定を停止してきた。