6月7日、アニメ制作会社の株式会社ガイナックスが自社ウェブサイトにて、5月27日に同社が東京地方裁判所に会社破産の申し立てを行い、受理されたことを発表しました。
同社は1984年創業。現在は株式会社カラーが著作権を保有する「新世紀エヴァンゲリオン」をはじめ、「トップをねらえ!」「放課後のプレアデス」など、数々の有名作品を送り出した企業ということもあり、発表直後からネットではこの話題でもちきり。加えて、発表の中で今後に残る問題点も見えてきました。
■ 「旧経営陣による会社の私物化で経済状態が悪化」とガイナックス社
破産の経緯について同社は「2012年ごろから見通しの甘い飲食店経営、無計画なCG会社の設立、運営幹部個人への高額の無担保貸付、投資作品の失注等、経営陣・運営幹部の会社を私物化したかのような運営により、経済状態が悪化していきました」と説明しています。

2019年5月には、当時の代表取締役が未成年女性に対する準強制わいせつ容疑で逮捕。同社ではかつて在籍していたアニメ監督・庵野秀明氏が代表を務める株式会社カラーの支援を受け、2020年2月に経営陣の刷新を図りますが、その過程で金融機関からの多額の借入やアニメーション業界各社への債務不履行、旧経営陣やその所属会社、個人に対して正当な権利者の許諾のない状態での知的財産や作品資料の売却や譲渡が発覚しました。

これを受け同社では、協力各社とともに作品の権利確認や、作家、クリエイターへの権利保護、そして散逸状態にあった知的財産や資料の管理、運用に取り組んだものの、「多くの旧経営陣が株主として残る状況に加え、前体制時に積みあがっていた高額負債解消には至りませんでした」と説明。今年5月に債権回収会社から債権請求訴訟の提訴を受け、業務の継続を断念、破産申立を行ったとしています。
■ 支援続けたカラー社も声明 「ガイナックス」商標は同社管理下に

同社の経営支援にあたってきた株式会社カラーも、ガイナックス社の発表と同日に「株式会社ガイナックスからのお知らせに関して」と題した声明を自社ウェブサイトで公開。「弊社の立場からいくつか補足を致したく、ガイナックス社・現経営体制との関係性も考慮した上で、公式サイトにて本コメントを掲載申し上げます」と述べました。
カラー社はかつてガイナックス社に所属していた庵野秀明氏が独立し、2006年5月に創業した会社。冒頭の通り、「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズの著作権は現在カラー社が保有しています。
声明の中でカラー社は「かねてよりガイナックス社の経営不振及び負債の存在を確認しておりました」と説明。経営に対して庵野氏が懸念を伝え、経営改善に向けた提案をしてきたものの、長きにわたり受け入れられなかったとしています。
「そのような状況であっても、当時の経営陣からの申し出を許容し、カラーとして援助的な融資などを行ったこともありました」とカラー社。しかしガイナックス社の状況は変わらず、事態はさらに悪化を続けていったといいます。
こうした事態を受け、庵野氏は「エヴァンゲリオン」シリーズを中心とする関連作品への風評被害を防ぐため、株式会社KADOKAWA、キングレコード株式会社、株式会社トリガーの3社へ協力を仰ぎ、各社から取締役を迎える形でガイナックス社の経営陣を刷新。未払の解消、各所に散逸した知的財産や資料の取り戻しに取り組んだものの、内情を把握した時点ですでに手の施しようがない状態であったということです。
なお、「ガイナックス(GAINAX)」の商標、称号についてはカラー社が取得し、管理していくとしています。