より多くの人への高度な医療の提供に向けて

上述の「World Heart Report 2023」の冒頭では、最も必要とする国や層が先端医療にアクセスできていない医療格差の問題が指摘されている。心血管疾患が由来の死亡のうち5件に4件が低・中所得国で起きている一方、高度な医療は高所得国に集中している状況だ。

POCADを開発したAISAPはまさに、誰もが高度な医療にアクセスでき、世界中のどこでも質の高い医療が受けられる社会の実現を目指している。

共同設立者の医師3人が専門とするのは心臓だが、スケーラブルなインフラを導入したPOCADは当然ながら心臓以外の臓器についても即時診断を可能にするもの。VentureBeatの記事にもあるとおり、初めは専門分野である心臓病治療を中心に、ほかの臓器についてもサービスを拡大していく予定だ。

Image Credits: AISAP

現在すでにイスラエル国内の医療施設で利用されているPOCADは、FDAの承認が得られしだいアメリカ市場でもローンチされる予定だ。医療へのアクセスを平等なものにし、より多くの人を病から救うことができるのか。同社の今後の取り組みに期待したい。

(文・松本直樹)