日本人の死因として、トップの癌に次いで15%を占める心疾患。世界全体で見るとこの比率はほぼ倍増し、2021年には全世界の死亡者数約3分の1に相当する2050万人が心疾患で死亡している(World Heart Report 2023より)。
心疾患に限らず、病気を早期発見するには超音波検査が不可欠だ。しかし、スキルのある医師不足により診断を受けるまで数か月かかることも。POCUS(Point of Care Ultrasound)であれば観察範囲をしぼった短時間での検査を検査室外の救急現場などで行えるが、「専門家しか使用できない」という根本問題は解消されていない。
そこで、専門家以外でも迅速で正確な診断ができるソリューションを開発したのが、イスラエルの医療スタートアップAISAPだ。既存のPOCUSデバイスと異なり、心臓血管系内の特定の弁でさえも詳細かつ正確に診断できるという。
同社は2024年5月にシードラウンドで1300万ドルの資金調達を行なったばかり。
AIを用いて超音波検査と診断を支援
AISAPが開発したソリューションは、超音波検査をサポートするクラウドベースのSaaS型プラットフォーム「POCAD」だ。主に2つの機能を提供するもので、患者と接して超音波検査を実際に行う臨床医の支援、およびAI画像解析による診断が可能となる。
検査時にはリアルタイムでガイダンスが提供され、診断に最適な画像をスキャンできる。撮影が完了すると、画像はクラウドに送信されAIによって解析される。解析結果は数分以内にレポートとして医師に返されるという。

Image Credits: AISAP
さらには、Newsweek「Worlds Best Hospitals 2024」で第9位にランクインしたイスラエルの医療機関Sheba Medical Centerでも有効性の検証が行われた。アメリカのCrozer Medical Centerの救急部門での製品導入も進んでいる。

Image Credits: AISAP
技術と医療のエキスパートが集まるチーム
AISAPはベテランのエンジニアや医師らが集まって2022年に設立されたスタートアップだ。
CEOを務めるRoni Attali氏は生理学や神経学分野での博士号とMBAホルダー。CTOのAdiel Am-Shalom氏はイスラエル軍8200部隊出身の凄腕エンジニアだ。また、戦略委員会を率いるTamir Pardo氏は同国諜報機関モサドで長官を務めた人物。

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AIエンジニアと医師からなるプロフェッショナル集団である同社チームは、現在総勢20名以上となっている。