正確な検査で治療薬処方の最適化を実現
MindTensionが検査の正確性にこだわる理由は、薬剤処方の最適化を図るためだ。ADHDの治療薬である「コンサータ」(メチルフェニデート)や「ストラテラ」(アトモキセチン)、「インチュニブ」(グアンファシン)などには動悸や心拍数上昇、めまい、眠気などの副作用もある。過剰・過小な投与では、患者にとって困難が生じてしまいかねない。
そこで、MindTensionの正確な検査結果と診断支援によってADHD治療薬の処方が大幅に改善されるというわけだ。一度の診察で治療薬の効果を測定してその場で調整を行うことで、必要な薬の最小有効量を特定し、効果を最良化できる。ADHDの症状を管理し、日常生活での困難・課題に患者がうまく対処できるようにするという、治療薬の本来あるべき効果が発揮されるのだ。
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Image Credits:MindTension
注意力が必要な職業分野にも応用可能
MindTension社はADHDを第一のターゲットとしているが、公式サイトにはその他のロードマップとしてメンタルヘルスの問題や症状を検知するアルゴリズムの作成も挙げている。
さらに、医師やパイロット、長距離ドライバーなど高い注意力を必要とするさまざまな職業分野にも同社のデバイスとシステムを応用する予定とのことだ。航空会社や病院で働く人々、重機作業などに従事する人員の注意レベルを評価することで、就業に適した状態かどうか確認が可能になるという。
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Image Credits:MindTension
その数か月後には、オーランドで開催されたAPSARD ADHD(ADHDおよび関連障害の米国専門家協会)カンファレンスにも参加。Psychiatric Timesによると、この会議ではアメリカ初の成人向けADHD診断・治療のガイドラインの開発についてディスカッションが行われた。MindTensionがメインマーケットとするアメリカでは、これまで正式な評価方法と臨床ガイドラインがない状態にもかかわらず成人のADHD診断が急増していたのだ。
今年中に公表されるというこのガイドラインの内容次第では、同社のアメリカでの事業に大きな展開が見られそうだ。
引用元:MindTension
*アメリカの全国人口調査では、1997年から2016年までの20年間で有症率が6.1%から10.2%に増加したことが判明(National Library of Medicineの2022年レポート)。日本の増加傾向はさらに顕著だ。2022年に信州大学医学部が発表した調査結果では、2010~2019年度の間にADHDの年間発生率が0~6歳の子供で2.7倍、7~19歳で2.5倍、20歳以上で21.1倍に増加。文部科学省の「令和2年度 通級による指導実施状況調査結果」によると、2008年に3406人だった注意欠陥多動性障害の児童数が2020年には3万3827人とほぼ10倍に増加している。
(文・Mickey Ohtsuki)
危険と言われる南ア・ヨハネスブルグを拠点にアフリカ南部を飛び回って帰国後、199x年代から産業翻訳のフリーランスを始め、2000年からテクニカルライター/Webライター業も開始。世界各地のスタートアップには、ちっぽけな探求者たちが巨大な既存勢力と戦うロマンがある。『なんでも評点』筆者。