成人の4割超が肥満に該当するアメリカを中心に、新しい肥満症治療薬「GLP-1受容体作動薬」が人気だ。血糖値低下や満腹感持続などの効果があるホルモンGLP-1を体外から補うもので、デンマークの製薬大手ノボノルディスクの「ウゴービ」や、米イーライリリーの「ゼップバウンド」などがある。
しかし、たとえばウゴービは月額定価が1300ドル(約21万円)以上と高額な薬。利用者の急増により、企業は保険負担に頭を悩ませ、国の健康保険プログラム加入者の保険料も上昇が予測されている。
こうした問題に対して、治療薬と並行して進めるべき食生活改善の側面から取り組むのが、サンフランシスコを拠点とするスタートアップFayだ。同社が構築したプラットフォームは、アメリカの登録栄養士(RD)によるカウンセリングをより身近にするもの。ユーザーは自分の住む都市や州にいる保険適用の栄養士を簡単に検索・予約し、安価または自己負担ゼロでカウンセリングを受けられる。
Googleも採用、2500万ドルの資金調達に成功
同プラットフォームはアメリカ50州をカバーする国内最大の登録栄養士ネットワークに成長。United HealthcareやAetna CVSをはじめ大手健康保険会社と提携しているほか、GoogleやAccentureといった有名企業の健康保険制度に組み込まれている。
企業や投資家から注目を集めるは2024年5月15日、Aラウンドで2500万ドルの資金調達に成功し、ステルスモードを脱したばかり。今回のラウンドはForerunner Venturesが主導、General Catalystおよび1984 Venturesが参加した。
新たに調達した資金で、ユーザー・栄養士の両方に対するサービスをさらに拡充する計画だ。将来的には食品配達プラットフォームとの統合や、保険適用範囲の拡大などを視野に入れているという。栄養士である家族の不満が起業のきっかけに
Fayは2021年、CEOであるSammy Faycurry氏とCTOのMark Stefanski氏によって設立された。Faycurry氏は、栄養士である母親ときょうだいから、アメリカ人の食生活の問題や栄養指導の難しさについて聞かされてきた。ハードルの一つが、保険でカバーされる栄養士の数が限られていることだった。
また、栄養士のカウンセリングに保険が適用されることもあまり知られていない。特定の診断や医師の紹介なしで適用される保険が大多数であるのにもかかわらず、だ。Faycurry氏は、母親やきょうだいのような栄養士が保険適用を受けながら、自分の診療所を開設できるプラットフォームを作ることを決意。2021年、Harvard Business SchoolでMBA取得に向けて学びながら、Fayを自己資金で立ち上げた。
立ち上げから間もなくGLP-1薬が普及しはじめ、登録栄養士の需要も拡大している。医師からGLP-1薬が処方される際、患者は栄養士の指導を受けるよう求められるためだ。実際、Fayユーザーの多くがGLP-1薬を処方された人々。同社のブログページでもGLP-1薬についてたびたび情報発信している。
しかし、薬だけで大幅な減量に成功できるせいか、食習慣の改善には取り組まない人々も。体重は減ってもコレステロール値は高いまま…といった層を栄養士に結びつけるのがFayのサービスなのだ。