投資信託は、投資運用のプロに自身の資金を託して、運用管理してもらう金融商品である。当然それには相応の対価が必要であるため、投資信託には各種手数料が掛かる。よく知られた手数料として販売手数料や信託報酬がある。しかし、これ以外にも投資家が直接的または間接的に負担しなければならないコストがあることも知っておきたい。

投資信託はどこにコストが掛かるのか?

投資信託を使えば、資金の運用を専門家に任せられるだけでなく、個人では投資できない金融商品や高額な投資対象にも投資が可能となる。また、分散投資ができるためリスクを軽減させる効果も見込める。さらに少額から投資を始められるというメリットもある。このように投資信託は、個人投資家にとって非常に便利で使いやすい金融商品である。

だが、投資信託は販売・運用・資産の保管などの業務をそれぞれ専門の機関(運用会社・販売会社・信託銀行)で役割を分担して成り立っている金融商品である。これにより投資家の保護と効率的な運営がなされている。言うまでもなく、この仕組みを維持するためには、コストが掛かる。そのため各機関は投資家から相応の手数料を受け取る必要がある。

具体的には、投資信託を販売する証券会社や銀行は、営業や販売のために様々な費用が掛かる。また、運用会社にはファンドマネージャーやアナリストが在籍しており、彼らの給与等の原資が必要である。基準価額の算出や目論見書の作成も運用会社の仕事であり、これらにもコストがかかる。さらに、信託銀行も信託財産の保管・管理をするための費用が必要となる。では、投資信託を購入する投資家はいつどのように、これらのコストを負担することになるのだろうか。

購入時に販売会社に支払う「購入時手数料」

「購入時手数料」は、投資信託を購入する際に投資家が販売会社である証券会社や銀行に支払う手数料である。販売会社によっては、「買付手数料」や「販売手数料」と呼ばれる。例えば、ある投資信託の購入時手数料が2.16%となっていれば、この投資信託を100万円購入する投資家は、2万1,600円を販売会社に支払うことになる。

高い場合は4%程度の投資信託も存在するが、近年では購入時手数料がかからないノーロードの投資信託も増えつつある。

購入時手数料の上限は各投資信託の目論見書に定められているが、定められた範囲内であれば、販売会社が商品ごとに決めることができる。そのため、同一の投資信託であっても販売会社によって販売手数料が異なることがあるため、事前に確認する必要がある。

なお、少ないケースではあるが、投資信託の換金時に手数料がかかることもある。

投資信託の保有中に発生する「信託報酬」

投資信託を保有している間は「信託報酬」が発生する。直接、投資家が支払うものではないが、日割り計算で日々信託財産から差し引かれるため、間接的に投資家がその費用を負担していることになる。一般的には、信託財産の額に応じて一定率を徴収されるタイプが多いが、収益に応じて徴収されるタイプも存在する。

徴収された信託報酬は、そのすべてを運用会社が受け取っているわけではない。信託報酬は運用にかかる費用、運用報告書の作成費や発送費、資産の保管のための費用などをまかなうものであり、運用会社・販売会社・信託銀行の3者で配分される。信託報酬がどれだけ徴収されるのか、また運用会社・販売会社・信託銀行でどのように配分されるのかは、投資信託の目論見書に明記されているので、購入前に確認したい。

信託報酬は投資信託の保有期間中、継続して払い続ける手数料になるが、単純に安ければ良いとは言えない。例えば、一般にアクティブ型の投資信託の方が、インデックス型の投資信託より信託報酬は高い傾向にある。しかし、アクティブ型の投資信託は、アナリストや専門家による調査などにコストを掛けて、より良い運用結果を出すことを目的としている。つまり、利益を多く出す前提で、高い信託報酬を設定しているのだ。したがって、単純に信託報酬のみを比較して投資信託を選択するのは賢明ではない。

意外と大きいことも?「売買委託手数料」

投資信託は、顧客から預かった資金を用いて株や債券などの売買を行っている。個人投資家が株式を売買する際には証券会社に手数料を払うのと同様、投資信託が投資する株式などを売買する際にも「売買委託手数料」と呼ばれる費用が発生する。売買委託手数料は売買の際、投資信託が証券会社などに支払う手数料であり、信託財産から支払われる。だが、売買委託手数料は信託報酬には含まれていない。そのため、投資信託が売買すればするほど、その分、信託財産の総額は減少し、その結果、基準価額も下がるので投資家が間接的に支払うコストの一つと言える。

売買委託手数料は、資金量や組み入れ資産の入れ替えの頻度によって、投資信託ごとに大きく異なるものだ。一般的に頻繁に売買を繰り返す投資信託であれば、売買高も大きくなるため、結果として、売買委託手数料も高くなる。

投資信託で、どれだけ売買をしてどれだけ売買委託手数料が掛かるかは事前に知ることはできないので、目論見書に具体的な料率や金額の記載はない。しかし、運用報告書を見ることで過去にどれくらい売買委託手数料が支払われたのかを知ることができる。例えば、運用報告書の「1万口当たりの費用明細」などの項目を見ると、具体的金額等が記載されている。

監査費用・印刷費用などいろいろある「その他費用」

信託報酬とは別に、投資信託の保有中に間接的な費用が掛かる投資信託も存在する。

よく見られるものとして「監査費用」がある。投資信託は原則決算ごとに、監査法人などから監査を受ける必要があり、その監査に要する費用だ。また、有価証券届出書、目論見書、運用報告書等の作成、印刷および提出等に係る費用を「印刷費用」として徴収する投資信託もある。そのほかにも別途徴収される費用が存在することがある。これらは、信託報酬と同様に信託財産から差し引かれるため、投資家が間接的に負担する費用となる。

「監査費用」や「印刷費用」といった負担については、個人投資家がその存在を認識していないケースもあるだろう。しかし、徴収される場合には必ず、目論見書に計算方法とともに記されているため事前に確認できる。また、毎期の運用報告書から実際に掛かった金額を確認することもできる。

手数料ではないが、投資家にとっては手数料と同様?「信託財産留保額」

換金時に「信託財産留保額」が発生する投資信託があることも覚えておきたい。信託財産留保額は投資家間の公平性を図るために、換金を申し込んだ投資家から一種のペナルティとして一定額を徴収するものだ。信託財産留保額は、別途支払うものではなく解約代金から差し引かれる形となる。

信託財産留保額は手数料とは異なり、運用会社や販売会社の収益になるわけでない。解約代金から差し引かれた信託財産留保額は、その投資信託の信託財産として留保されるものである。つまり、他の投資家のために信託財産を少し残していくのである。残した信託財産は基準価額や分配金にも反映されるため、引き続き投資信託を保有している投資家に帰属する。

信託財産留保額は、発生する投資信託もあれば、しないものもある。また、信託財産留保額は一般的には換金時に徴収するが、購入時に徴収する投資信託も存在する。目論見書に必ず明記されているので、事前に確認しておきたい。

「信託財産留保額」がゼロの投資信託のほうがいいのか?

投資信託の解約時に手数料を徴収する投資信託はほとんどないが、信託財産留保額は投資家からは一見、解約時に徴収される手数料と変わりがない。例えば、信託財産留保額が1.5%だとすると、評価額100万円の投資信託を解約すると、受け取れる金額は、98万5,000円となる。

100万円(評価額) − 1万5,000円(信託財産留保額) = 98万5,000円(受取金額)

このように、差し引かれる金額は小さいとは言えない。では、信託財産留保額が徴収されない投資信託が、投資家にとって良いものとなるのだろうか。単純にそうとは言えない。信託財産留保額は、投資信託の短期での解約を防止し、運用を安定させる効果もあるからだ。

「信託財産留保額」のメリットとは?

投資家側から見ると、解約時に徴収された信託財産留保額は、解約していない投資家の持ち分になる。これは、長期に渡って投資信託を保有し続ける投資家にとって、自身の持ち分が増えることを意味する。

また、運用する側から見てもメリットがある。運用側も頻繁に解約されると安定的な運用ができなくなる。信託財産留保額が徴収される投資信託では、投資家は長期間保有するほうが有利なため、投資信託の短期売買が抑制され、運用を安定させる効果もある。長期保有する投資家の利益を守り、安定的な運用に役立っている点を考えれば、一見解約時手数料に見える信託財産留保額も、投資家にとって必ずしもマイナスなものと言い切ることはできない。

このことは、昨今の金融庁の動向からもうかがい知ることができる。2018年からスタートした「つみたてNISA」の対象商品は、金融庁の厳しい基準をクリアしたものだけが選定された。基本的に購入時手数料、解約時手数料はともに0%であることが求められ、また、信託報酬についても上限が設定された。しかし、各種手数料についてこれほどまでに厳しい基準が設定された一方、信託財産留保額の設定については特に制限がなかった。実際に、「信託財産留保額」が解約時に徴収される投資信託も「つみたてNISA」の対象商品に選定されている。

個人投資家も投資信託の手数料に敏感になろう

少し前までは、販売手数料をゼロとするノーロードの投資信託は珍しい存在であったが、近年では、投資信託に掛かるコストが意識されるようになり、ノーロードの投資信託も増えてきた。それでも、金融庁は日本の投資信託の手数料がまだ比較的高いと指摘している。個人投資家としても高いコスト意識を持ち、投資信託を選別していく必要がある。自身が保有している投資信託で掛かる各種手数料が相応のものであり、納得できるものかを一度見直してみる必要があるだろう。

文・潮見孝幸(金融ライター)

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