私達の人生は常に「今日」、いや「今」しかない。10年後のことを思い悩んだとしても、そのときにどうなってるかなんて誰にもわからない。病気や事故だけでなく、天災や世界的感染症の流行など未知要素であふれている。どこまで深く考えたとしても、自分が思うように人生が展開していくことなんてありえない。

だとしたら、未来を案じて思い悩む意味などないだろう。

誤解してほしくないのだが、これは将来に備える必要などない、と言っているのではない。必要以上に不確定要素におびえ、不安に苛まれることはないと言っているだけだ。

今の自分にできることは何なのか。この1日をどう生きるか―これだけを一生懸命考えて実行していけばいい。そう自分に言えるようになった。

ではどうやったら今日1日を充足感を持った幸せな日として過ごせるのか。

あるとき私は「なんか今日はモヤモヤするな」とか「気分が晴れないな」というときは睡眠、食事、運動のいずれかが不足していることに気づいた。空腹や睡眠不足でイライラすることは想像つくだろうが、同様に運動が足りないとき、外をひとっ走りしてシャワーを浴びれば気分がよくなる。

睡眠、食事、運動を保てれば大抵はいい1日になる。そこでこの3要素を満たすように、毎日を設計・デザインすることにした。

私は睡眠を大切にしているので8時間は寝て、十分な食事をとって、できるかぎり毎日運動をする。するとそれだけで気分のよい1日を過ごせるようになった。

さらに充足感を得るために、自分に1日の目標を課した。充足感の鍵は「今日もやることをやったぞ」と胸を張れる1日にすることだ。

1日の目標はあえて低く

私は次のことを1日の目標に設定している。

腕立て、腹筋各21回(最近20回から1回増やした) ランニングあるいはウォーキング(1時間程度) 原稿を書く(1~2時間程度)

「たったそれだけ?」と君は思ったかもしれない。その感想は正しい。私はあえて、やらなければいけないことを少なくしている。私だってこんな本を書いているくらいだ。やろうと思えばほかにもたくさんのことができる。もう少しハードな運動でもいいし、ブログやSNSで情報発信……といったように。しかしそうしない理由が当然ある。

そもそも1日の目標を掲げているのはなぜか。それは胸を張れる1日にするため。だから、そう思える基準を無理のない範囲にしているのだ。やることを増やせば達成できない日もでてくる。

たとえば5つの目標を設定して、4つしかできなかったとする。すると「今日は全部クリアすることができなかった」と不完全燃焼な気分を味わうことになる。一方、目標を今のように低めに設定すれば、よほどのことがない限り達成できる。

そうすれば満足して1日を終えることができるのだ。余裕がある日や気が向いたときには数を増やせばいい。追加でブログをひとつでも書けたら「今日はブログの更新までできたぞ」とさらに満足することができる。

ここで気づいてほしいのは、たとえ同じことをやっても「自分の中の期待値(目標)によって、人生の満足度は違ってくる」ということだ。

たとえば同じ15分のランニングでも、毎日15分と決めて実行できたのと1時間を目標にした結果の15分では自分の中での達成感はまったく異なる。15分走ったという事実は変わらないのに、だ。

このように人生の満足度を高めるという観点で見れば、目標や達成基準は低いほうが実は望ましいのだ。たしかに目標が高いほうがやりがいがあるだろうし、クリアしたときの達成感は大きいかもしれない。しかしここでの目的は充実した1日にすることだ。高い達成基準に毎日挫折感や不完全燃焼の気持ちを味わっていたら意味がない。

1日の達成基準は低くすること。そのうえでプラスアルファでさらにほかのことが達成できたなら、その日は最高の1日になる。そんなイメージで毎日を生きていけると、人生の充足度はアップしていく。

滝川 徹(タスク管理の専門家) 1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年5月24日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。