とするとYouTuberの店紹介のほうがよりピンポイントですが、実感がよくわかるし、その気にさせやすいともいえるのです。
インフルエンサーのマーケティングとはそういうことだと思うのです。同じYouTuberでも機械的に紹介しているだけだなとか、ナレーションが下手だな、と思うのもあれば地上波の食レポ番組をはるかに上回る上手な内容もあるし、店側も宣伝になるからか、うまく結託して思わず行きたくなるようなところもあります。よって必然的に人気の飲食系動画を見てしまうという悪魔の手法にまんまと引っかかっているわけです。
世にいうインフルエンサーはインフルエンサー同士でつながるので、べき乗的影響力を発揮します。日本最大級のインフルエンサーならフォロワーは3000万人級ですから人口で4人に1人、コア年齢で見れば半分以上を占めるようなレベルになるのです。
私の友人であるインフルエンサー氏は、更に著名なインフルエンサーと相当つながっているので「これ見てよ!」と私のLINEに時として一気に3つも4つも連荘で動画を送ってきます。その情報量たるやすごいものがあり、私にはとてもじゃないけれどそれらの情報を全部見る余裕もエネルギーもないですが、世の中のマーケティングはかつての手法から大きく変わってきたことは実感できます。
マーケティングとは非常に広い範囲のビジネス戦略と拡販手段です。その中で広告宣伝はマーケティング上、一つの分野に過ぎなかったのが、今では広範なマーケティングに変わってきているともいえるのです。例えば、飲食ついでの話だと何をどう仕入れているのか、どう調理しているのか、仕込みはどうなのかをチラ見せするわけです。
かつての飲食系マーケティングは完成された皿に盛られた食べ物をおいしそうな写真にしていかに客目線を引くかでした。今は店の経営そのものを相当ディスクローズしないと客が満足しない時代になったのです。それこそ、シェフ〇〇の横顔が必要になるのです。
ジャパネットたかたの販売方法は取り扱い商品をいかによく見せるか、そして見せ手である高田さん父子のインフルエンサーとしての力がその販売数だともいえるのです。その点で1990年から始めた高田明さんの先見の明ともいえるでしょう。私からすれば高田さんは商品を売っているというよりジャパネットたかたの信用力を売っているのだろうと考えています。その信用力の上に商品が乗っかっている、そんな感じです。
日本の方はご存じないかもしれないですが、吉田 潤喜氏がアメリカでBBQソースとして「ヨシダソース」を売り出したのは80年代だったかと思います。
氏がバンクーバーに来た時に講演に行き、話を聞いてなるほどと思ったのは、彼のソースが売れたきっかけの一つはコストコで試供品の紹介を自らやって開花したという点でした。それも侍だか奇抜な恰好でお客さんに面白いことを言いながら気を引いて一生懸命売った、それがヨシダソースの原点だと聞いた時、マーケティングの一環として「誰が作っているのかディスクローズしオーナーが直接訴えて売れた成功例」と位置付けています。
これらを考えるとモノを売るというスタンスはかつてのオーソドックスな手法からかなり戦略的変化が生じているといってもよいでしょう。SNS一つにしても様々なツールがある中でどれを選ぶのか、一つなのか、全部なのかということもあります。ですが、私はそれ以上に「来て下さったお客様に失望させないクオリティを提供できるのか」が最大のチャレンジだと思います。
1時間並んで入ったけどサービス最悪、見た目もイマイチ、味も普通というイメージを持たれたら一巻の終わりです。その客は二度と来ないし、SNSで低評価のコメントを書くのです。つまりプラスと思ってやった努力がマイナスになって跳ね返ってくるのです。
そういう意味ではインフルエンサーを使ってマーケティングをするだけでもダメなのだと思います。ビジネスの奥深さとはこの辺りにあるのでしょう。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年6月3日の記事より転載させていただきました。
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