「部下が育児休業を取得したとします。 上司は戸惑うばかりで、職場復帰が迫ってもどう対応すればよいのかわからず、何もせず放置してしまっている、というケースなどが考えられます。さらに、上司が必ずしも部下の業務を把握しきれないことです。専門性の高い職場では、上司であったとしても業務の詳細がわからず指示を出しにくい場合があります」(山田さん)

「アウトソーシング化により業務の連携もわかりにくくなっている時もあります。あるホテルでは、清掃部門をアウトソーシングしたため、アウトソーシング会社が変わるたびに業務の連携に苦慮されていました。どちらにも共通するのは、上司が部下をよく知らない、または知ろうとしていないということです」(同)

マネジメント力が必要とされる理由

職責がアップすれば、ジョブサイズも変わります。その際に求められる能力はマネジメント力です。しかし、組織がフラット化して階層が減って、以前はどこの会社にもあった職位が減っています。そのため、管理職になる前の段階で、一定数の部下をもつという経験ができづらくなっている現象が起きています。

その結果、マネジメント力のないまま管理職になってしまうケースが発生しています。上手く機能すればいいですが総じて組織が弱体化しています。それでは、部下のいない組織の中堅社員はどのようにマネジメント力を磨けばよいのでしょうか。

筆者が推奨しているのは、新入社員の育成担当者になることです。自分から上司に了解を得ながら、積極的に面倒を見るのです。仕事を教えるのと同時にその管理をすることになりますので、たとえ上司、部下の関係になくとも、先輩・後輩という関係のなかでマネジメント力を磨くことができるでしょう。変なプライドをもたず勉強のつもりで対応することが求められます。

飲み会の仕切りもやってみる

ほかには、職場の飲み会の幹事を引き受けるのもいいでしょう。新人の役目が多いと思いますが、あえて中堅にまかせる効果もあります。

飲み会の幹事というのは、本気でやれば管理職に求められる能力を高めるためのよい機会です。幹事は、まず参加者のスケジュールを調整しなければなません。職場の飲み会で日程や参加者の調整をするのは、ちょっとした規模の会議を設定するよりも難易度が高くなります。

たとえば、「ここは毎回利用しているから他の店を開拓」「部長と課長が喫煙者」「イタリアン専門店に決まったものの焼酎が置いてあることが必須」など、要望を吸い上げていくと、予算や料理、スペースなどニーズに合ったお店を開拓するのが難しいことがわかると思います。飲み会の幹事という役割は、ちょっとしたビジネスの縮図ともいえるわけです。

組織には一定以上の成果を上げる人はたくさんいます。そのなかで抜き出るにはプラスαが必要です。本書を読み、部下に任せきりではなく、マネジメントの本質を理解してみませんか。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

2年振りに22冊目の本を出版しました。

「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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